「丘の上の本屋さん」より
映画「丘の上の本屋さん」のワンシーンより
古本屋の店主リベロは、アフリカ系の少年に好意で貸し出した『白鯨』について感想を聞いている。
少年「時々、何と言うか・・・」
リベロ「退屈?この小説を一言で表すなら何かな?」
少年「復讐」
リベロ「たぶんそれが正解だろう。それでもよく考えればもっと思いつくはずだ。物語というのはとても奥が深い。最初に感じたことが全てじゃないんだ。読むことでじっくり考える時間ができる。」
少年「おじさんはヘンな名前だけど、いいこと言うよ。」
リベロ「飽きた?続ける?」
少年「続けるに決まってる!」
これは、今朝Amazonプライムで視聴していた映画のワンシーンである。とても心に響いたので、自分の気づきとともに書いておきたくなった。
ここからは、映画を離れて、私の日常の出来事となる。映画が気になる方は、心置きなく、Amazonプライムへどうぞ。( ´艸`)
☆昨日の母との会話
母「なぜだかね。寂しいっていう気持ちが無いのよね。いつもお父さんの写真に話しかけているし。これからご飯食べるねとか、これから眠るねとか。お母さんね、お父さんの三回忌まで頑張ろうと思っているの。来年、家族で北海道行くの楽しみでならないのよ。」
1月22日に、父が亡くなってからの母については、こちらのブログに記録してきた。たまに母は、「父を先に見送るとはこういうことかと思い知らされている。心底寂しくて仕方ない。早く父に迎えに来て欲しいと、今日も仏壇前で泣いている。」と心情を吐露してくれた。
母は、姉に対してはもっとあからさまで、姉は母の葬儀の具体的プランまで調べさせられていた。姉は複雑な心境でありつつ、それで母の気持ちが収まるならと、(まだピンピンしている母の)葬儀見積を取り寄せたりしていた。母は、「骨壺はこういうので、棺桶はこんな感じでお願いしたい。」と要望を出した。
母は、この半年、父不在に耐えることが辛く、自分が死ぬ日を心待ちに過ごしていた。また精神的に不安定になり、いつも親身になってくれている姉に対して暴言を吐き、天然系で大らかな姉をズタズタに傷つけたりもしていた。
姉は、それでも母を見捨てることは無かった。「もう放っておく!」と愚痴をこぼしながらも、母を励ますために温泉や食事に連れていったり買い物に車を出したりしていた。
ただでさえ仕事で過労気味の姉は、慢性疲労がピークに達したのだろう。「もしかしたら母より先に呆けるかも?!」と本気で心配になるほどの見事なボケ具合を示すようになり、先に自分が死んでも母が困らないようにと、姉は養子縁組を決意した。(母は父の再婚相手なので、私たち姉妹と直系ではない。姉は母と法律上の親子になることにしたのだ。)自分が先立っても、息子、娘たちが責任を持って母の面倒を見られるようにとの考えだった。
昨日、母と姉と私の三人で実家近くのイタリアンでランチをした。母は、いつものようにテーブルに父の写真を飾り、「お父さん、食べなさい。」と飲み物や取り皿に取り分けた食事を供えた。三人でこの先の旅行プランなど楽しく語り、食事が終わったため席を立った。会計のため出口付近に立っていたら、レストランのスタッフが慌ててこちらにやってきて、母に忘れ物を手渡した。何と!母にとって大切な大切な父の写真だった!母は、「あまりに楽しすぎちゃって。」父の写真を仕舞うのをすっかり忘れ、帰ろうとしていたのだ。母は、「これで(忘れるの)二回目よ。忘れるようになったんだから、たいしたものよね。」と、カラカラと笑った。そんな母を私は健全だと感じ、父の写真に「お父さんごめんごめん」と謝りつつ、人の心のしなやかさに、つい微笑んでしまうのだった。こうやって、忘れていく。それでいいんだ。年に一回、命日に思い出すくらいで丁度いいのかもしれない。だって母は忘れた原因を「楽しすぎたから。」と自ら語っていたのだから。
この章の冒頭の母との会話に戻る。
「不思議ね。お父さんとのことを思い出そうとすると、良かったことしか思い出せないのよ。」と。どうやら母の頭には、「幸せだったな~。楽しかったな~。」という感情を伴う記憶だけが残されたようだ。これが母の生きる力であり、おそらくは、姉の純粋な母への愛が救いへと導いたのだろう。
さて、映画のワンシーンへと戻ろう。
私は、今朝、このシーンを見ながら、次のように脳内自動翻訳されていたのだった。
☆脳内翻訳された映画のワンシーン
母「時々、何と言うか・・・」
神「寂しい?この人生を一言で表すなら何かな?」
母「孤独・・・かしら?」
神「たぶんそれが正解だろう。それでもよく考えればもっと思いつくはずだ。人生というのはとても奥が深い。最初に感じたことが全てじゃないんだ。生きることでじっくり味わう時間ができる。」
母「さすが神様ね!いいこと言うわね。」
神「(生きるのに)飽きた?続ける?」
母「生き続けるに決まってる!」
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