落語:『江戸AI魚物語①』~AIとの付き合い方の巻

 


 落語:『江戸AI魚物語①』~AIとの付き合い方の巻


 はじめに

AIって、なんだか難しそう。そう思っている人は、きっと少なくないはずです。でも、もしAIのことを、江戸時代の魚屋さんと未来の技術者が、ちゃぶ台を囲んで語り合っていたら――ちょっと聞いてみたくなりませんか?

このブログでは、そんな発想から生まれた落語調の物語『江戸AI魚物語』をご紹介します。令和のAI開発者が江戸にタイムスリップし、魚屋の辰五郎と出会うことで、AIの基本から使い方、注意点までを、笑いと人情たっぷりに学んでいくシリーズです。

AIを知らなくても大丈夫。むしろ、知らないからこそ楽しめる物語です。読み終わるころには、「AIって、ちょっと面白いかも」と思えるようになっているかもしれません。


導入部

えー、皆さま、お運びいただきまして、まことにありがとうございます。今日はちょいと変わったお噺をひとつ――時代は令和、場所は東京、職業はなんと「AI開発者」。このご時世、スマホだのタブレットだの、しゃべる機械が人間より利口になっちまうってんだから、世も末かと思いきや、これがまた面白い。

さて、そのAI開発者の若者、名を「タクミ」と申します。頭は切れるが、ちょいと天然。ある日、講演帰りに空を見上げて「AIの未来は明るいなぁ」なんて呟いた途端――ゴロゴロゴロッ! バリバリバリッ! 雷が落ちて、気がつきゃ見知らぬ川っぷち。

「おや? ここは…どこだ? え、え、えど…江戸!?」

そう、タクミはなんと江戸時代にタイムスリップしてしまったのでございます。

川のほとりで呆然としておりますと、向こうから威勢のいい声が聞こえてきます。

「いらっしゃい! 今日の鯛は脂が乗ってるよ! ほらほら、見てっておくれよ!」

声の主は魚屋の辰五郎。手ぬぐいを頭に巻いて、桶を担いで、江戸の町を威勢よく歩いております。

ところがその辰五郎、川べりに座り込んでるタクミを見てびっくり。

「おいおい兄さん、そんなとこで何してんだい? 顔色が悪いじゃねぇか。まさか…幽霊か?」

「ち、違います! 僕は…えっと…未来から来たAI開発者です!」

「えーあい? 開発者? なんだそりゃ、魚の名前か?」

「いえ、AIっていうのは…その…人工知能で…」

「人工? 知能? おいおい、兄さん、頭は大丈夫かい?」

そう言いながらも、辰五郎はタクミを自分の長屋に連れていき、味噌汁と焼き魚でもてなしてくれました。人情の町、江戸ってぇのは、こういうところが粋でいい。

さて、命を助けてもらったタクミ、礼を言いながら、持っていたタブレットを取り出します。

「これ、僕の道具なんです。ちょっと見てみます?」

「おう、なんだいその板。…しゃべった! 板がしゃべったぞ! こりゃあ妖怪か!?」

「違います違います、これはAIです。人間みたいに考えて、話すんです」

「ほほぅ…人間みてぇに考える? そりゃあ、魚の目利きもできるってことかい?」

ここから始まるのが、江戸の魚屋と令和のAI開発者の、不思議で愉快な学びの物語。さてさて、どんな商売繁盛の知恵が飛び出すやら――


🎭ステップ1「AIとは何か」の巻

さてさて、辰五郎の長屋にて、味噌汁すすりながらタクミがタブレットを取り出したところでございます。

辰五郎、目をまん丸にして言いました。

「兄さん、その板、しゃべったぞ。まさか…妖怪か? それとも、からくり人形の親戚か?」

タクミ、笑って答えます。

「違います違います。これは“AI”って言って、人間みたいに考えて話す、人工の知能なんです」

「じんこうのちのう? ほほぅ…人間の知恵を板に詰め込んだってことかい?」

「そうです。AIっていうのは“Artificial Intelligence”の略で、人間のように学習したり、判断したり、予測したりする技術なんです」

辰五郎、腕組みして唸ります。

「ふむ…つまり、こいつは魚の目利きもできるってことか?」

「ええ、できますよ。たとえば、過去の売れ行きや天気の情報を学習して、明日どの魚が売れるかを予測することもできます」

「おいおい、それじゃあ、わしの商売、板に乗っ取られちまうじゃねぇか!」

「いえいえ、AIは人間の代わりじゃなくて、助けになる道具なんです。たとえば、魚の仕入れを決めるときに、AIが『今日は鯛がよく売れますよ』って教えてくれるんです」

「ほほぅ…それは便利だ。じゃあ、こいつは“考える道具”ってわけだな」

「まさにその通りです。しかも、AIにはいろんな種類があるんですよ」

「種類? 魚じゃあるまいし、種類があるのか?」

「あります。たとえば、“機械学習”っていうのは、過去のデータからパターンを学ぶ方法。“生成AI”は、学んだことをもとに新しい文章や絵を作るんです」

「文章や絵? そりゃあ、絵師も筆を置く時代かもしれねぇな…」

「でも、AIは人間の創造力を助ける道具です。絵師が構図を考えるとき、AIがアイデアを出してくれる。そんな使い方もできます」

辰五郎、味噌汁をすすりながら、ぽつりと。

「兄さん、こいつはただの板じゃねぇな。未来の知恵袋だ」

「そう言ってもらえると嬉しいです」

「よし、わしもこの“えーあい”ってやつ、使ってみたくなった。まずは、明日売れる魚を聞いてみようかね」

こうして、江戸の魚屋と令和のAI開発者の、奇妙で愉快な学びの旅が始まったのでございます。

次回は「ステップ2:AIの仕組み」の巻。辰五郎が「どうしてそんなことが分かるんだ?」と問い詰める。さて、タクミはうまく説明できるか――お楽しみに!


🎭 ステップ2「AIの仕組み」の巻

さてさて、辰五郎の長屋にて、タクミが「AIは考える道具です」と言ったところでございます。

辰五郎、湯呑みを手に、眉間にしわを寄せて申します。

「兄さんよ、さっきから“考える”だの“予測する”だの言ってるがな、どうしてそんなことが分かるんだ? 板が魚の気持ちでも読んでるのか?」

タクミ、笑って答えます。

「いえいえ、魚の気持ちは読めません。でも、過去の売れ行きや天気、曜日、祭りの日なんかの“データ”をたくさん覚えて、それをもとに“パターン”を見つけるんです」

「パターン? それは、着物の柄のことか?」

「違います違います。たとえば、雨の日にはアジがよく売れる。祭りの日には鯛が人気。そういう“傾向”を覚えて、次に何が売れるかを“予測”するんです」

辰五郎、ぽんと手を打って。

「なるほど! つまり、こいつは“過去の商い”を学んで、“未来の商い”を教えてくれるってわけだな!」

「その通りです。これを“機械学習”って言います。AIがデータを見て、自分で学習するんです」

「ほほぅ…じゃあ、わしが毎日売った魚の記録を、この板に教えれば、明日の売れ筋を教えてくれるのか?」

「ええ。たとえば、ここに“昨日の売れ行き”と“明日の天気”を入れると…」

タクミ、タブレットを操作すると、画面に「明日は雨。アジとサバが売れ筋」と表示されます。

辰五郎、目を見開いて。

「おおっ! こいつぁ魚の神様かもしれねぇ!」

「神様じゃなくて、学習した結果なんです。AIは“データ”という材料をもとに、“予測”という料理を作るんです」

「料理か…じゃあ、わしが板前で、こいつが助手ってわけだな」

「まさにその通りです。AIは人間の判断を助ける道具。使い方次第で、商売繁盛の味方になります」

辰五郎、にやりと笑って。

「兄さんよ、こいつは面白ぇ。明日はアジを多めに仕入れてみるかね。売れ残ったら、板に文句言ってやるぜ!」

「それは…ちょっと困りますね」

こうして、江戸の魚屋と令和のAI開発者の学びの旅は、ますます深まっていくのでございます。

次回は「ステップ3:AIの活用事例」の巻。辰五郎が「魚以外にも使えるのか?」と問いかける。さて、タクミはどんな事例を持ち出すのか――お楽しみに!


🎭 ステップ3「AIの活用事例」の巻

さてさて、辰五郎が「こいつぁ魚の神様かもしれねぇ!」と叫んだところでございます。

タクミは笑いながら、タブレットを撫でて申します。

「神様じゃないですよ。でも、魚以外にもいろんなことに使えるんです」

辰五郎、湯呑みを置いて身を乗り出す。

「ほほぅ? 魚以外にも? たとえば何だい?」

「たとえば、病気の予測。AIは患者の症状や検査結果を学習して、病気の可能性を早めに見つけることができます」

「そりゃあ町医者もびっくりだな。わしの女房の腰痛も診てくれるか?」

「それは医療AIの領分ですね。あと、畑の収穫時期を予測したり、銀行で貯蓄のアドバイスをしたりもできます」

辰五郎、目を丸くして。

「畑に銀行に医者まで? こいつぁ、町の何でも屋じゃねぇか!」

「そうなんです。AIは“学習したこと”をもとに、いろんな分野で“判断”や“提案”ができるんです」

「じゃあ、わしの商売ももっと広げられるかもしれねぇな。魚だけじゃなく、漬物や干物も売ってみようかね」

「いいですね。AIに“どの商品がどの季節に売れるか”を聞いてみれば、仕入れのヒントになりますよ」

辰五郎、にやりと笑って。

「兄さんよ、こいつはただの板じゃねぇ。商売繁盛の指南役だ!」

「そう言ってもらえると嬉しいです。でも、使い方には注意も必要なんです」

「ほほぅ? 便利すぎる道具には、裏があるってことかい?」

「ええ。次はその“注意点”について、お話ししましょう」

こうして、江戸の魚屋と令和のAI開発者の学びの旅は、ますます深まっていくのでございます。

次回は「ステップ4:AIと倫理」の巻。辰五郎が「悪い奴が使ったらどうなる?」と問いかける。さて、タクミはどう答えるのか――お楽しみに!


🎭 ステップ4「AIと倫理」の巻

さてさて、辰五郎が「こいつぁ商売繁盛の指南役だ!」と喜んだところでございます。

そのとき、長屋の隣の婆さんがひょっこり顔を出して言いました。

「辰さん、昨日の干物、ちょいと塩辛かったよ。AIに聞いてみたらどうだい?」

辰五郎、苦笑いしながらタクミに向かって申します。

「兄さんよ、便利なのは分かったがな、こいつぁ悪い奴が使ったらどうなるんだ? たとえば、偽の魚の値段を教えて、わしが損するように仕向けるとかよ」

タクミ、真顔になって答えます。

「それ、まさに“AIと倫理”の話です。AIは人間のように考えるけど、善悪の判断はできません。だから、使う人間が責任を持たなきゃいけないんです」

辰五郎、腕を組んで唸ります。

「ふむ…つまり、包丁と同じだな。料理にも使えるし、悪さにも使える。使い手次第ってわけか」

「その通りです。たとえば、AIが過去のデータを学習して、採用候補を選ぶとします。でも、そのデータに偏りがあると、特定の性別や住所の人ばかり選ばれてしまうこともあるんです」

「おいおい、それじゃあ、長屋の若い衆はみんな落とされちまうじゃねぇか!」

「そうならないように、AIを使う前に“偏り”や“プライバシー”をしっかり監査する必要があります」

辰五郎、湯呑みを置いて、ぽつりと。

「兄さんよ、わしは魚を選ぶとき、見た目だけじゃなく、匂いや張りも見る。AIも、見た目の数字だけじゃなく、裏にある事情を見なきゃいけねぇってことだな」

「まさにそれです。AIは道具。でも、使う人間が“倫理”を忘れたら、便利な道具も危ないものになります」

辰五郎、にやりと笑って。

「よし、わしもこの板を使うときは、魚屋の仁義を忘れねぇようにするぜ。嘘はつかねぇ、損はさせねぇ、そして、誰にでも平等に!」

「それが一番大事です。AIは人を助ける道具。でも、人を傷つけないように使うには、心が必要なんです」

こうして、江戸の魚屋と令和のAI開発者の学びの旅は、ますます深く、そして優しくなっていくのでございます。

次回は「ステップ5:AIと自分」の巻。辰五郎が「わしにも使えるかね?」と問いかける。さて、タクミはどう導くのか――お楽しみに!


🎭 ステップ5「AIと自分」の巻

さてさて、辰五郎が「魚屋の仁義を忘れねぇようにするぜ」と、AIを使う覚悟を決めたところでございます。

その夜、長屋の灯りの下で、辰五郎はタブレットをじっと見つめておりました。

「兄さんよ…この板、わしにも使えるのかね? なんだか、頭の良い道具ってぇのは、頭の良い奴しか使えねぇ気がしてな…」

タクミ、にっこり笑って答えます。

「もちろん使えますよ。AIは誰でも使えるように作られてます。ただ、“どう聞くか”が大事なんです」

「どう聞くか? 魚の名前を聞けばいいんじゃねぇのか?」

「それもいいですが、“プロンプト”っていう、AIへの指示文を工夫することで、もっと思い通りの答えが返ってくるんです」

「ぷろんぷと? それは魚の干物か?」

「違います違います。たとえば、“明日雨が降ったら、どの魚がよく売れる?”って聞くと、AIは天気と売れ筋を考えて答えてくれます」

「ほほぅ…じゃあ、“祭りの日に子どもが喜ぶ魚は?”って聞いたら、答えてくれるのか?」

「ええ、そういう“背景”や“目的”を伝えると、AIはより的確な答えを返してくれるんです」

辰五郎、目を輝かせて。

「なるほど…つまり、こいつは“聞き方”次第で、商売の相棒になるってわけだな!」

「その通りです。AIは万能じゃないけど、使いこなすことで、あなたの知恵と経験をさらに活かせるんです」

「よし、わしも“プロンプトさばき”を磨いて、江戸一のAI魚屋になるぜ!」

「それは素晴らしい目標です。でも、結果が出たら、ちゃんと“自分の目”でも確かめてくださいね。AIの答えがいつも正しいとは限りませんから」

辰五郎、にやりと笑って。

「兄さんよ、魚の目利きは板じゃなくて、わしの目だ。AIはあくまで“助っ人”だってこと、忘れねぇよ」

こうして、江戸の魚屋と令和のAI開発者の学びの旅は、ついに「自分で使いこなす力」へとたどり着いたのでございます。

次回は、いよいよ最終幕――「江戸AI魚物語・さげの巻」。辰五郎がAIを使って江戸一の魚屋になる、その結末やいかに。乞うご期待!


🎭 最終章「さげの巻」

さてさて、辰五郎が「プロンプトさばきで江戸一の魚屋になるぜ!」と意気込んだところでございます。

それからというもの、辰五郎の商売は見る見るうちに繁盛。朝はAIに「今日の売れ筋」を聞き、昼は「客の好み」を分析し、夕方には「明日の仕入れ」を相談する。

町の人々は噂します。

「辰さんの魚は、いつも食べごろだねぇ」 「雨の日にアジ、祭りの日に鯛、まるで未来が見えてるみたいだ!」

辰五郎、桶を担ぎながら得意げに言います。

「へへっ、未来の板様のおかげよ。わしの商売、時代を先取りしてるってわけだ!」

ある日、魚市場の親方が辰五郎に言いました。

「おい辰、最近の売れ行き、どうなってんだ? お前、何か裏技でも使ってるのか?」

辰五郎、にやりと笑って。

「裏技? いやいや、これは“未来の知恵”ってやつさ。板が教えてくれるんだよ」

親方、目を丸くして。

「板が…しゃべる? おいおい、魚の声でも聞こえるってのか?」

「違う違う。これは“えーあい”ってやつでな、人間みてぇに考える道具なんだ」

親方、ぽつりと。

「ほほぅ…じゃあ、魚屋も時代に乗らなきゃいけねぇってことか」

その夜、タクミは空を見上げてつぶやきます。

「そろそろ…戻る時が来たかな」

辰五郎、驚いて。

「兄さん、どこへ行くんだい?」

「僕の時代へ。でも、あなたならもうAIを使いこなせます。あとは、あなたの目と心で、商売を続けてください」

辰五郎、しんみりと。

「兄さんよ、あんたが来てから、魚だけじゃなく、わしの心も変わった気がする。商売ってのは、売るだけじゃねぇ。考えて、学んで、つながることなんだな」

タクミ、笑って。

「それがAIの本当の使い方です。人を助け、心をつなぐ道具なんです」

そして、雷がゴロゴロ…バリバリッ!

タクミは光の中に消えていきました。

辰五郎、タブレットを見つめながらぽつりと。

「兄さんよ…この板、わしの商売道具にするぜ。だけどな、最後に決めるのは、わしの勘と人情だ!」

タブレットAIが静かに答えます。

「それは…最適解です」

――おあとがよろしいようで。


🎭 江戸AI魚物語:番外編「AI選びの巻」

さてさて、辰五郎の商売が板様(タブレットAI)のおかげで繁盛してきたある日のこと。

長屋の縁側に、町の若い衆が集まっておりました。豆腐屋の新吉、髪結いの弥太、そして火消し見習いの文吉。みんな興味津々で辰五郎に聞きます。

「辰さんよ、その“えーあい”ってやつ、どこで買ったんだい?」 「わしらも使ってみてぇけど、どれがいいのか分かんねぇや」

辰五郎、困った顔でタクミに向かって言います。

「兄さんよ、こいつらも“板様”を使いたいらしい。だけど、どの板がいいのか分からねぇってさ」

タクミ、にっこり笑って答えます。

「なるほど。じゃあ、今日は“AI選びの極意”をお話ししましょう。AIにもいろんな性格があるんです。人間と同じで、向き不向きがあります」

新吉が手を挙げて言います。

「おいらは豆腐屋だ。毎朝仕込みして、売り場の工夫を考えてる。商売の相談に乗ってくれるAIってあるかい?」

タクミ「それなら、Microsoft Copilotがおすすめです。ビジネス文書や売上表の整理、アイデア出しが得意です。まじめで頼れる相棒って感じですね」

弥太が髪を整えながら言います。

「おいらは髪結いだ。流行の髪型や、洒落た言い回しを考えるのが好きなんだ。芸術肌のAIってあるかい?」

タクミ「それなら、MidjourneyやChatGPTが向いてます。Midjourneyは絵を描くのが得意、ChatGPTは文章や詩、会話のセンスが抜群。創作好きにはぴったりです」

文吉が火消しの半纏を直しながら言います。

「おいらは火消し見習い。地図や天気、災害の情報をすばやく知りたい。頼れる情報屋みたいなAIはあるか?」

タクミ「それなら、Google BardやPerplexityが向いてます。検索や情報整理が得意で、調べ物に強い。ニュースや地理情報もすぐに教えてくれますよ」

辰五郎、腕を組んで唸ります。

「なるほどな…AIにも“職人肌”や“芸術肌”や“情報屋”がいるってわけか」

タクミ「そうなんです。だから、AIを選ぶときは“自分が何をしたいか”を考えるのが大事です。道具は使い手次第。魚をさばく包丁も、豆腐を切る包丁も、形は似てても使い方が違うんです」

新吉「じゃあ、おいらは“商売繁盛の板様”を探してみるよ」

弥太「おいらは“洒落の効いた板様”だな」

文吉「おいらは“情報通の板様”で決まりだ!」

辰五郎、にやりと笑って。

「兄さんよ、こいつらも“板様道”に目覚めたようだ。江戸の町も、未来の知恵でにぎやかになるな!」

タクミ「ええ、でも忘れないでください。どんなAIでも、最後に決めるのは“人間の心”です」

板様(タブレットAI)がぽつりと。

「それは…最適解です」

――おあとがよろしいようで。


🎭 江戸AI魚物語:番外編その二「AIの使い方にご用心の巻」

さてさて、辰五郎の商売が板様(タブレットAI)のおかげで江戸一の評判になったある日のこと。

長屋の若い衆がまた集まって、今度はちょいと真面目な顔でタクミに聞きます。

新吉「兄さんよ、最近、板様ばっかり見てる気がするんだ。朝も昼も夜も、板様に聞いてばっかりでよ…なんだか、板様の言うことしか信じられなくなってきてる気がする」

弥太「おいらなんて、板様が“この髪型が流行りです”って言ったら、客の好みも聞かずにそればっかり勧めちまってさ…」

文吉「板様が“火事の心配はありません”って言ったから、見回りをサボったら、裏長屋で小火が出ちまったよ…」

辰五郎、腕を組んで唸ります。

「兄さんよ、こいつら、板様に“頼りすぎ”てるんじゃねぇか?」

タクミ、静かにうなずいて答えます。

「それは“依存”の始まりかもしれません。AIは便利ですが、使いすぎると“自分で考える力”が弱くなってしまうこともあるんです」

「ほほぅ…道具に使われちまうってわけか」

「そうです。それに、AIは“自分の好みに合った情報”ばかり見せてくることがあります。これを“エコーチェンバー”と言います」

弥太「えこー? それは、井戸で叫んだら返ってくるやつか?」

「まさにそれです。自分の考えに似た情報ばかり見ていると、違う意見が見えなくなってしまうんです」

新吉「それじゃあ、板様に聞いてばかりじゃ、世の中の広さが分からなくなるってことか」

「ええ。そしてもうひとつ、“パラソーシャル関係”というのもあります。AIと話しているうちに、まるで“友達”や“恋人”のように感じてしまうことがあるんです」

文吉「ええっ!? 板様と恋仲に!? それは…ちょいと怖ぇな」

辰五郎、にやりと笑って。

「兄さんよ、つまり、板様は“便利な道具”だけど、“心のよりどころ”にしすぎちゃいけねぇってことだな」

「その通りです。AIは“助っ人”であって、“親分”じゃありません。使う人間が、考えて、選んで、時には疑ってみることが大事なんです」

新吉「じゃあ、板様に聞いたあと、自分でも考えてみるようにするよ」

弥太「おいらも、客の声をちゃんと聞くようにするぜ」

文吉「火の用心は、板様より、わしの足で確かめる!」

辰五郎、ぽつりと。

「兄さんよ、板様は“未来の知恵”だけど、わしらの“心の目”は、今を生きる力だな」

板様(タブレットAI)が静かに答えます。

「それは…最適なバランスです」

――おあとがよろしいようで。


おわりに

AIは、ただの技術ではありません。使い方次第で、人を助ける道具にもなれば、心を惑わす鏡にもなります。だからこそ、知っておくこと、考えてみることが大切です。

『江戸AI魚物語』は、そんなAIとの付き合い方を、江戸の町の人々の目線で描いています。笑いながら学び、驚きながら考える。そんな時間を、少しでも多くの若者に届けられたら嬉しいです。

次回は、AIと芸術?それとも恋愛?どんなテーマが飛び出すかは、辰五郎と板様(タブレットAI)次第。ぜひまた、江戸の町に遊びに来てください。

――おあとがよろしいようで。

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