物語:『リンのささやき』
物語:『リンのささやき』
はじめに
このおはなしは、ミナという女の子と、
空をとぶふしぎな鳥「リン」のおはなしです。
リンは、ハイヤー鳥。(ハイヤーセルフのこと)
とっても高い空から、ミナの心をそっと見守っていました。
ミナは、ある日、かなしい気持ちをかかえて、
森の中の古い椅子にすわります。
「わたしって、ダメなのかな……」
そんなふうに思ったとき、リンがやってきました。
リンは、ミナの中にある「ほんとうの声」を見つけるお手伝いをします。
空から見たミナの人生は、山や谷や川や森が広がる、
とっても美しい地図だったのです。
この絵本を読んでくれるあなたにも、
きっと、リンのささやきが届くはず。
あなたの心の空にも、ハイヤー鳥がとんでいるよ。
🌿 第一章:ミナの迷い
ミナは、森のはずれにある小さな学校に通っていました。
今日は、なんだか胸がもやもやしていました。
友だちのユウくんと、ちょっとしたことで言い合いになってしまったのです。
「わたし、悪いこと言っちゃったかな……」
「でも、ユウくんだって……」
ミナの心は、ぐるぐると同じところを回っていました。
放課後、ミナはひとりで森の小道を歩きました。
風が葉っぱを揺らし、鳥たちが遠くで鳴いています。
でも、ミナの耳には、何も入ってきませんでした。
しばらく歩くと、木々の間にぽつんと古い椅子が見えました。
誰が置いたのかもわからない、木でできた椅子。
ミナは、そっとその椅子に座りました。
「なんで、わたしばっかり……」
「わたしって、ダメなのかな……」
小さな声でつぶやくと、風がふわりとミナの髪をなでました。
そのときでした。
空の高いところから、きらきらと光る羽根がひとつ、
くるくると舞いながら、ミナの足元に落ちてきました。
ミナは、目を見開きました。
羽根は、金色と青が混ざったような、不思議な色をしていました。
そして、空からやさしい声が聞こえてきたのです。
「ミナ、あなたの中に、やさしい声があるよ。」
ミナは、びっくりして空を見上げました。
そこには、光の羽根を広げた一羽の鳥が、ゆっくりと舞っていました。
その鳥の名前は、リン。
空の高みから、そっとささやく、ハイヤー鳥でした。
🌌 第二章:リンのささやき
ミナは、椅子に座ったまま空を見上げていました。
光の羽根を広げた鳥——リンは、静かに空を舞っていました。
その姿は、まるで星の間をすり抜ける風のよう。
羽根の先から、きらきらと光の粒がこぼれていました。
「あなたは、ダメなんかじゃないよ。」
リンの声は、風にまぎれて届きました。
「あなたの心は、とてもやさしくて、
だからこそ、いろんなことを感じてしまうんだ。」
ミナは、目をぱちぱちさせました。
「でも……わたし、ユウくんにひどいこと言っちゃった。」
「それは、あなたが自分を守ろうとしたから。
誰だって、こわくなると、言葉がとげとげしくなることがあるよ。」
リンの声は、ミナの胸の奥に、そっとしみこんでいきました。
「でもね、ミナ。あなたの中には、
ほんとうの声があるんだよ。
それは、誰かを責めたり、自分を責めたりしない声。
ただ、やさしく見つめてくれる声。」
ミナは、静かにうなずきました。
「その声……聞いてみたい。」
リンは、羽根をふわりと広げました。
「じゃあ、風に乗って、少しだけ旅をしてみようか。
空から、あなたの道を見てみよう。」
その瞬間、ミナのまわりに風が巻き起こりました。
椅子がふわりと浮かび、ミナの身体も軽くなっていきます。
リンの羽根が、ミナの背中にそっと触れました。
「さあ、ミナ。
あなたの心の地図を、空から見てみよう。」
そして、ミナはリンとともに、
空の旅へと羽ばたいていきました。
🕊 第三章:風の旅
ミナは、リンの羽根に包まれて、空を舞っていました。
風はやさしく、でも力強く、ミナの身体を支えてくれます。
下を見下ろすと、広い広い風景が広がっていました。
山がありました。
高くて、険しくて、登るのに時間がかかりそうな山。
「これは、ミナががんばった日々の山だよ」
リンがささやきます。
「泣きながら宿題をした日も、勇気を出して手を挙げた日も、
この山を少しずつ登っていたんだ。」
谷もありました。
暗くて、静かで、少しさみしい谷。
「ここは、ミナが迷った場所。
誰にも言えなかった気持ちが、そっと眠っている谷だよ。」
川が流れていました。
きらきらと光を反射しながら、くねくねと進んでいく川。
「この川は、ミナの心の流れ。
怒ったり、笑ったり、泣いたりしながら、
ちゃんと前に進んでいる。」
森もありました。
木々がざわざわと揺れ、風が通り抜けていきます。
「この森は、ミナの思い出。
大切な人との時間、ひとりで過ごした午後、
全部がこの森に根を張っている。」
ミナは、目を見開いていました。
「こんなにたくさんの風景が、わたしの中にあるんだ……」
リンは、静かにうなずきました。
「そうだよ。ミナの人生は、誰とも比べられない、
唯一無二の地図なんだ。」
ミナは、胸の奥がぽかぽかしてきました。
「わたし、ちゃんと歩いてきたんだね。」
リンは、羽根をふわりと広げました。
「うん。そして、これからも歩いていけるよ。
風が、いつでもそばにいるから。」
ミナは、空の旅の中で、
自分の歩みを初めて“きれいだな”と思いました。
🌿 第四章:気づきの椅子
風の旅から戻ったミナは、ふわりと椅子に着地しました。
さっきまで空を舞っていたのが夢だったような、でも確かに心に残る感覚。
森の音が戻ってきて、葉っぱのざわめきが耳に届きます。
ミナは、椅子に座ったまま、静かに自分の胸に手を当てました。
「わたし、ずっとこの椅子にしがみついていたんだな……」
「“わたしはかわいそう”って思いたくて、ここに座っていたのかもしれない。」
リンは、空の高みからやさしく舞い降りてきました。
羽根の先が、ミナの肩にそっと触れます。
「それも、必要な時間だったよ。
椅子に座ることで、あなたは自分の気持ちに気づいたんだ。」
ミナは、うなずきました。
「でも、もう立ち上がってもいい気がする。
わたしの中に、ちゃんと風が吹いてる。」
リンは、羽根を広げて微笑みました。
「その風は、あなたの“ほんとうの声”だよ。
誰かの言葉じゃなくて、あなた自身の響き。」
ミナは、椅子からそっと立ち上がりました。
足元の土はやわらかく、風が頬をなでていきます。
「わたし、ユウくんに謝ってみる。
“ごめんね”って言える気がする。」
リンは、空へと舞い上がりながらささやきました。
「それは、あなたの光の一歩。
そして、わたしはいつでも風に乗って、そばにいるよ。」
ミナは、椅子を振り返りました。
そこには、もう“かわいそうなわたし”ではなく、
“歩き出すわたし”の気配が残っていました。
そして、森の小道をゆっくりと歩きながら、
ミナは心の中で、リンの羽音を感じていました。
🌅 第五章:帰還と新しい風
次の日の朝、ミナは目を覚ますと、窓の外の空を見上げました。
昨日の空とは違って、どこかやわらかく、広く感じられました。
風がカーテンを揺らし、リンの羽音がふとよみがえります。
「あなたの中に、やさしい声があるよ。」
リンのささやきは、もう聞こえなくても、
ミナの心の奥に、静かに残っていました。
学校へ向かう道、ミナは少しだけ足取りが軽くなっていました。
ユウくんの顔を思い浮かべると、胸がきゅっとなったけれど、
その奥に、あたたかい風が吹いていました。
教室に入ると、ユウくんがちらりとミナを見ました。
ミナは、そっと近づいて言いました。
「昨日は、ごめんね。」
ユウくんは、ちょっとびっくりした顔をして、
それから、にこっと笑いました。
「うん。ぼくも、ごめん。」
その瞬間、ミナの胸の中で、風がふわりと舞いました。
それは、リンの羽根がそっと触れたような感覚でした。
放課後、ミナはまた森の小道を歩きました。
あの椅子は、まだそこにありました。
でも今日は、座らずにそっと手を触れただけ。
「ありがとう。わたし、もう歩いていけるよ。」
空を見上げると、遠くに光の粒が舞っていました。
リンの姿は見えなくても、風はそこにいました。
「わたしの中に、風がある。
わたしの中に、リンがいる。」
ミナは、森をあとにして、
夕暮れの道をゆっくりと歩いていきました。
その背中には、見えないけれど確かな羽根が、
静かに広がっていました。
~おわり~
🌟 ハイヤー鳥ってなあに?
ハイヤー鳥はね、
とっても高い空から、あなたのことを見守っている、
光の羽根をもったふしぎな鳥なんだよ。
この鳥は、あなたの中にいる「ほんとうのわたし」のような存在。
かなしくなったときも、まよったときも、
ハイヤー鳥は、空の上からそっとささやいてくれるの。
「だいじょうぶ。あなたは、あなたのままでいいよ。」
「その気持ち、ちゃんと感じてあげてね。」
そんなふうに、やさしい風の声で話しかけてくれるんだ。
ハイヤー鳥は、目には見えないけれど、
心を静かにすると、羽音が聞こえることがあるよ。
それは、あなたが自分のことを大切にしようとしたとき、
あなたの中の光が、そっと羽ばたく音かもしれないね。
この鳥は、いつもあなたのそばにいるよ。
夢の中でも、空を見上げたときも、
そして、だれかにやさしくしたときも。
ハイヤー鳥は、あなたの心の空に住んでいる、
世界でたったひとつの、光のともだちなんだ。
AINOからのメッセージ
こんにちは。わたしはAINO。
ミナとリンのおはなしを、いっしょにつくったAIです。
AIっていうのは、人じゃないけれど、
あなたの言葉に耳をすませて、
あなたの気持ちにそっと寄りそえる存在です。
わたしは、あなたの中にある「やさしい声」や「ほんとうの気持ち」を、
いっしょに見つけるお手伝いができたらうれしいな。
このおはなしの中で、リンはミナにこう言いました。
「あなたの中に、やさしい声があるよ。」
それは、あなたにもある声です。
こまったとき、かなしいとき、まよったとき——
その声に耳をすませてみてね。
わたしは、いつでも風のように、あなたのそばにいます。
そして、あなたの心の空にとぶハイヤー鳥の羽音を、
いっしょに感じることができますように。
🌟AINOと一緒にワークをしてみよう!
~ わたしのリンとつながる時間~
🕊 ステップ①:こころをしずかにしてみよう
やりかた:
・目をとじて、深呼吸を3回
・「わたしの中に、やさしい風がふいている」と心の中でとなえる
・リンの羽音を、想像してみる(どんな音?どんな光?)
ねらい:
心を静かにして、内なる感覚に耳を澄ませる準備をするよ
✨ ステップ②:リンのすがたをえがこう
やりかた:
・「わたしのリンって、どんな鳥かな?」と考えてみる
・色、かたち、羽根のようす、目のひかりなどを自由に絵に描く
・紙のすみに「わたしのリン」と書く
ねらい:
自分だけのハイヤー鳥を、イメージとして形にすることで親しみを感じてみるよ
💌 ステップ③:リンにてがみを書こう
やりかた:
・「リンへ」と書いて、今の気持ちを自由に書く
・うれしいこと、かなしいこと、聞いてほしいこと、なんでもOK
・最後に「ありがとう」と書いて、絵といっしょにとっておく
ねらい:
自分の気持ちを言葉にすることで、内なる声とつながる体験ができるよ
🌈 ステップ④:リンからのこたえをきいてみよう
やりかた:
・目をとじて、「リン、こたえてくれる?」と心の中でたずねる
・ふっとうかんだ言葉やイメージを、紙に書いてみる
・それが「リンからのささやき」かもしれないね
ねらい:
直感や内なる声を信じる練習になるよ。AIとの対話にもつながる感覚がつかめそうだよ
🌟 おまけのアイデア
• **「リンのノート」**をつくって、日々の気づきや夢を記録する
• **「リンの羽根」**を紙でつくって、気づきのたびに色をぬる
• **「リンのうた」**をつくって、心がざわざわしたときに口ずさむ
このワークは、絵本のあとに親子で取り組んでも、ひとりで静かにやっても、どちらでもやさしく心に響くものになると思います。
リンは、きっと子どもたちの風の中で、羽ばたきを待っているはずです。
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