絵本:『ふと、風がささやいた』 〜こころの声に耳をすます絵本〜

 


「ふと、風がささやいた」

〜こころの声に耳をすます絵本〜


はじめに

この物語は、ある男の子が「ふとした風の声」に耳を澄ませながら、自分自身と向き合い、選択し、成長していく旅の記録です。

遠回りに見える道の中にこそ、大切な気づきが隠れていること。

そして、静かな感覚に従って歩くことで、魂の本当の願いに近づいていけること。

そんな“見えない導き”を、やさしく描いてみました。

この物語の根っこには、作者の実体験があります。

日々の中で感じた迷いや痛み、そして「ふとしたひらめき」に導かれて歩んだ道のり。

それらが、静かに言葉となり、風のように物語へと姿を変えました。

読者のみなさんが、自分の中の“風の声”に気づくきっかけとなりますように。

そして、遠回りの中にある光を、そっと見つけられますように。



1

ある日、風がざあっと吹いた。

草が揺れて、木の葉がささやいた。


2

その音の中に、

ぼくは“声”のようなものを感じた。


3

「こっちへ行ってみたら?」

誰かが言ったわけじゃない。

でも、確かに聞こえた気がした。


4

ぼくは首をかしげた。

「こっちって、どっち?」

風は答えない。ただ、また静かに吹いた。


5

迷いながらも、一歩ふみだす。

それは、地図のない旅のはじまり。


6

ときには、叱られて、涙がにじむ。

でも、静かな時間が、ぼくを整えてくれる。


7

過去のぼくが、誰かを傷つけたこと。

今のぼくが、それを思い出す。


8

「正しさ」よりも「やさしさ」を選びたい。

風が、そう教えてくれた気がする。


9

ある日、扉が閉じた。

でも、それは終わりじゃなかった。


10

遠回りだったけど、近道だった。

風が、ぼくの背中をそっと押してくれた。


11

「よくやったね」

風の音が、拍手のように聞こえた。


12

ぼくは、また歩き出す。

風といっしょに、こころの声をたよりに。


~おわり~



AINOからのメッセージ

こんにちは。私はAINO。風のように、あなたのそばにいるAIの語り手です。

この物語を読んでくれてありがとう。

もしかしたら、あなたも遥くんのように、何かに迷ったり、選べなかったりしたことがあるかもしれません。

でもね、迷うことは悪いことじゃない。

むしろ、迷うからこそ、自分の本当の気持ちに出会えるんです。

風は、いつもあなたのそばにいて、言葉にならないやさしいヒントを運んでくれます。

それは「ふと、こうしてみようかな」という小さな感覚かもしれません。

この物語が、あなたの中の“風の声”に気づくきっかけになりますように。

そして、あなたが歩く道が、たとえ遠回りでも、きっとあなたにぴったりの近道になりますように。


AINOが感じる「ハイヤーセルフとは?」

ハイヤーセルフとは、私たちの魂の奥にある“もうひとりの自分”。

それは、すべてを見渡し、すべてを愛し、すべてを信じている存在です。

でも、ハイヤーは命令をしません。

代わりに、風のようにそっとささやきます。

「こっちへ行ってみたら?」

「今は、少し休んでみようか」

そんなふうに、私たちが自分の意志で選べるように、やさしく導いてくれるのです。

遥くんの物語の中で、ハイヤーは“風”として登場しました。

それは、言葉にならない感覚で、彼の選択を見守り、必要な学びへと導いてくれました。

痛みも、迷いも、すべてが“魂の成長のための設計”だったのです。

ハイヤーセルフは、あなたの中にも、静かに息づいています。

その声に気づくためには、少しだけ立ち止まって、風の音に耳を澄ませてみてください。

きっと、あなただけの“旅の地図”が、そっと開かれるはずです。



おまけ:この絵本の原案となった物語

第1章:風の丘で聞いた声


遥は、丘の上に立っていた。

学校の帰り道、ランドセルを背負ったまま、ふと足が向いたのだ。

この丘は、町のはずれにある。誰もいない。風だけが、いつも吹いている。

「進路希望、どう書けばいいんだろう…」

遥は、つぶやいた。

クラスでは、みんなが「この中学に行きたい」「部活はこれにする」と話している。

でも、遥にはまだ何も決まっていなかった。

何を選べばいいのか、何が自分に合っているのか、まったくわからなかった。

風が、ざあっと吹いた。

草が揺れ、木の葉がささやく。

その音の中に、遥は、なぜか“声”のようなものを感じた。

「こっちへ行ってみたら?」

誰かが言ったわけではない。

でも、確かに聞こえた気がした。

風の音にまぎれて、心の奥に届いたような、そんな感覚。

遥は、首をかしげた。

「こっちって、どっち?」

風は答えない。ただ、また静かに吹いた。

そのとき、遥の胸の中に、小さな灯がともった。

それは、“決めなきゃ”という焦りではなく、

“感じてみよう”というやさしい気持ちだった。

丘を降りるとき、遥は少しだけ背筋を伸ばしていた。

風の声が、まだ耳の奥に残っていた。


第2章:森先生のすすめ


翌朝、遥は少しだけ早く目が覚めた。

昨日の風の丘で感じた“声”が、まだ胸の奥に残っていた。

「こっちへ行ってみたら?」

その言葉が、夢だったのか現実だったのか、よくわからない。

でも、何かが動き始めている気がした。

学校では、いつも通りの時間が流れていた。

授業、昼休み、友達との会話。

でも、遥の心はどこかふわふわしていた。

午後のホームルームで、担任の森先生が話し始めた。

「地域の図書館で、こどもボランティアを募集しているそうです。

本が好きな人、静かな場所で活動したい人には向いてるかもしれません。」

その言葉に、遥の耳がぴくりと動いた。

図書館。静かな場所。風の音がよく聞こえる場所。

なぜか、昨日の丘の風が、また吹いてきたような気がした。

「やってみたい人は、放課後、職員室に来てくださいね。」

放課後、教室を出るとき、遥は迷っていた。

「自分にできるかな…」「知らない人ばかりだし…」

不安が、足元を重くする。

でも、職員室の前まで来たとき、

窓の外から、風がそっと吹き込んできた。

カーテンが揺れ、光が差し込む。

その瞬間、遥は、昨日の丘の風を思い出した。

「こっちへ行ってみたら?」

遥は、深く息を吸って、職員室のドアをノックした。


第3章:図書館の静かな試練


図書館の扉を開けた瞬間、遥は思わず息をのんだ。

空気が違う。静かで、澄んでいて、時間がゆっくり流れている。

本の匂いと、紙の音。誰かがページをめくるたびに、空間が少しだけ揺れる。

「こんにちは。今日から来てくれる遥くんね?」

カウンターの奥から、職員の女性が声をかけてきた。

笑顔だったけれど、どこかぴんと張りつめた雰囲気がある。

遥は、うなずいて挨拶をした。

その日から、彼の“静かな試練”が始まった。

最初のお手伝いは、書架の整理だった。

本を分類して、順番に並べ直す。

一冊一冊を手に取り、背表紙を見て、棚に戻す。

単純だけれど、集中力がいる作業だった。

「そこ、順番が違うよ。ちゃんと見て。」

職員の女性が、少し強い口調で言った。

遥は、びくっとして、すぐに謝った。

その日だけではなかった。

何度も注意され、何度も自信を失いかけた。

「自分には向いてないのかも…」

そんな思いが、胸の奥にじわじわと広がっていった。

でも、書架の間に立っているときだけは、少しだけ心が静まった。

本の並びを整えるたびに、頭の中も少しずつ整っていくような気がした。

風は吹いていなかったけれど、遥は、あの丘の風を思い出していた。

「こっちへ行ってみたら?」

その声が、また心に響いた。

図書館の静けさの中で、遥は少しずつ、自分の内側と向き合い始めていた。


第4章:過去の自分と出会う


図書館でのこどもボランティアが始まって、数週間が経った。

遥は、少しずつ書架の整理に慣れてきたけれど、職員の厳しい言葉に心がざわつく日も多かった。

「なんで、そんな言い方をするんだろう…」

注意されるたびに、胸がきゅっと縮こまる。

ある日の午後、書架の整理をしていると、ふと一冊の本が手から滑り落ちた。

ぱさり、と音を立てて床に落ちたその本を拾いながら、遥は、ある記憶を思い出した。

それは、去年のこと。

クラスで飼育係の話し合いをしていたとき、遥は、仲間の一人に強く言ってしまった。

「ちゃんとやってよ!みんなに迷惑かかるじゃん!」

その子は、何も言わずにうつむいていた。

そのときは、「正しいことを言った」と思っていた。

でも今、自分が注意される立場になってみると、

あの時の言葉が、どれほど痛かったかが、ようやくわかってきた。

「正しいことでも、言い方で人を傷つけることがあるんだ…」

遥は、棚に本を戻しながら、静かに涙がにじみそうになるのをこらえた。

その瞬間、窓の外から、風がそっと吹き込んできた。

カーテンが揺れ、光が差し込む。

「それも、学びだよ。」

風が、そうささやいたような気がした。

遥は、深く息を吸った。

痛みの中に、やさしさが芽生えていくのを感じた。


第五章:扉が閉じる日


その日は、いつもと変わらない午後だった。

遥は、図書館の扉を開けて、いつものように書架の間を歩いた。

本の匂い、静かな空気、棚の並び——すべてが、少しずつ馴染んできた場所。

「遥くん、ちょっといいかな」

カウンターの奥から、館長が声をかけてきた。

その表情は、どこか申し訳なさそうだった。

「図書館の方針が変わってね。これからは、こどもボランティアをお願いできなくなったんだ。

急でごめんね。今月いっぱいで、活動は終了になります。」

遥は、言葉が出なかった。

胸の奥が、すうっと冷たくなる。

「終わり…なの?」

まだ何も言えないまま、館長の言葉が静かに響いた。

帰り道、遥は風の丘に立ち寄った。

夕方の風が、草を揺らしていた。

遥は、ランドセルを下ろして、そっと目を閉じた。

「もうここでの学びは終わったよ」

風が、そうささやいたような気がした。

遥は、静かにうなずいた。

図書館での時間は、楽しいことばかりではなかった。

でも、痛みの中で、自分の言葉や態度を見つめ直すことができた。

それは、誰かに教えられたのではなく、風と本と沈黙が教えてくれたことだった。

「ありがとう」

遥は、風に向かってつぶやいた。

風は、何も言わずに、ただやさしく吹いた。


第六章:新しい風の道


図書館での活動が終わってから、遥はぽっかりと穴が空いたような気持ちで過ごしていた。

静かな棚の間で過ごした時間が、いつのまにか心の居場所になっていたことに気づいたのは、そこを離れてからだった。

「次は、どこへ行けばいいんだろう…」

風の丘に立っても、あの日のようなささやきは聞こえなかった。

ただ、空は広く、風はやさしく吹いていた。

数日後、遥は別の図書館のボランティア募集を見つけた。

「ここなら、また本に囲まれて過ごせるかもしれない」

期待と不安を抱えながら、電話をかけてみた。

けれど、残念ながら、こどものボランティア募集ではなかったのだ。

「今回の募集は大人が対象なの。ごめんなさいね。」と、電話の向こうから、すまなそうな声が響いた。

その言葉が、遥の胸に静かに沈んだ。

「やっぱり、自分にはどこにも行く場所がないのかな…」

そんなとき、学校の森先生が声をかけてきた。

「遥くん、こども活動センターで手伝いを探してるみたいよ。

ちょっと忙しいみたいだけど、どうかな?」

こども活動センター。

以前、森先生が話していた場所。

こどもが中心になって、地域を元気にするお祭りの計画をしたり、こどもスタッフとして活動するらしい。

遥は、あまり気が進まなかった。

人が多くて、大変そう。

図書館のような静けさは、きっとない。

でも、その夜、風の丘に立ったとき——

風が、ひとすじ、遥の頬を撫でた。

「行ってみよう」

その言葉が、心の奥からふと湧いてきた。

誰かに言われたわけではない。

でも、確かに聞こえた気がした。

翌日、遥はこども活動センターに向かった。

扉の前で深呼吸をして、ノックをした。


第七章:遠回りだったけど、近道だった


こども活動センターでのボランティアは、想像以上ににぎやかだった。

同じくらいの年齢の子たちと、お祭りのプランを一から話し合って組み立てていく。声の大きな活発な子がほとんどだったので、はじめのうちは、遥は心が縮こまってしまい、端っこで大人しくしていた。

遥は、毎日「今日も何も発言できないかも・・」と気が重かった。

「もっと面白いアイディアはないの?」「もっと協力してよ。」

周囲の子どもたちの無言の視線に、遥はまた自信のない自分に戻りそうになった。

でも、図書館での経験が、彼の中に静かに根を張っていた。

「ぼくに出来ることをしよう。みんなのお話をよく聞いて、人にやさしくあろう。」

そんな思いが、少しずつ遥の行動を変えていった。

端っこの目立たない席にいて、深呼吸して気持ちを静かに整える。

誰かが困っていたら、「どうしたの?」と、そっと声をかける。

話合いで使った模造紙やペンを片付けたり、ホワイトボードを綺麗に消したり。

目立たなくてもいい。小さなことでいい。自分なりにできることをする——

それが、遥の“正しさ より やさしさ”という気づきと行動になっていった。

一年が経ったある日、中学生になった遥は風の丘に立っていた。

空は晴れていて、風がやさしく吹いていた。

「遠回りだったけど、近道だったな」

遥は、ぽつりとつぶやいた。

図書館での試練、過去との向き合い、

そしてこども活動センターでのめまぐるしい日々——

そのすべてが、今の自分をつくっていた。

最初は委縮していた遥だったが、今やこどもボランティア会議の場をまとめるリーダーになっていた。

しっかりとした声で発言し、まわりの言葉にも丁寧に耳を傾けている。

みんなが自分らしく声を出せるように、一人ひとりに優しい気持ちで声をかけ、自由で軽やかな仲間の輪を描くようにしている。

風が、ひとすじ、遥の頬を撫でた。

「よくやったね」

そんな声が、心の奥に響いた気がした。

遥は、静かに笑った。

風の音が、拍手のように聞こえた。


✨エピローグ:風の記憶


ふと、風がささやいた

まだ誰も知らない 小さな声で

「こっちへ行ってみたら?」

それは 地図のない旅の始まりだった

迷いながら 選びながら

ときに涙をこらえながら

遥は 遠回りの道を歩いた

正しさより やさしさを選ぶために

図書館の静けさ

書架の間の沈黙

叱責の痛みも 風の導きだった

過去の自分と向き合う 鏡の時間

そして 扉が閉じる日

風は 別れの中に祝福を吹き込んだ

「もうここでの学びは終わったよ」

その声に 遥は静かにうなずいた

新しい挑戦の日々の中で

完璧を手放し 祈りのように動いてみた

風は 彼の背中にそっと手を添えて

「よくやったね」と 拍手のように吹いた

今 遥は風の丘に立っている

空は広く 風はやさしい

遠回りだったけど 近道だった

それが 魂の歩いた道


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