傷つく練習をするインナーチャイルド
本日、退行催眠療法セミナーに参加した。
インナーチャイルドを癒やす年齢退行療法の体験を記録しておく。
☆テーマ
「傷つく練習をするインナーチャイルドを癒やしたい」
昨日、気が付いたばかりなのだが、私には、妙な癖がある。
散々悩んで、いろいろな方面で配慮して、熟慮の末ベストな結論を出して行動したことであったとしても、結果に自信が持てず、不安になってしまう。最低最悪な未来を敢えて想像し、その感情体感をしっかりイメージで味わって、前もって自分を傷つけておく癖がある。そうしておいた方が、安心する。反射的に自動反応で行っていた。いつから始まったのだろう?
なぜ、こんなことをするのか私の内面に質問してみたところ、「自分の心を守るため」だと言う。
悪気もなく行動してしまったことで、予想外に誰かに不快な思いをさせたり怒らせたりしてしまった時、そのショックは大きく、心がストレートに傷ついてしまう。あらかじめ最悪を想定し、傷つく予行練習をしておけば、実際にそうなったとしても大きな傷にはならない。心の筋肉をわざと壊しておいて、強化訓練するような感じ。「ああ、その心の傷、もう体験済みだから、未知の痛みじゃないから大丈夫!」と言えるようにしておくニュアンス。
ただ、この癖は結構しんどいので、原因となった幼少期に戻り、インナーチャイルドを解放したい。もう、その役割を続けなくても良くなったんだよと教えてあげたい。無駄に傷つくなんて、エネルギーの無駄遣いだ。
悪気無く(しかも考えられる限り配慮した上で)選択した行動について、相手がどのような反応を示したとしても、それは相手の自由である。箸が転がって笑う人もいれば、怒る人もいる。どこまでも責任を感じて自分を責める必要は無い。「ああ、この人はこう感じるんだな。」と境界線を引くことを覚えたい。ひとつの出来事はあくまで中立であり、そこに色を着けて判断するのは各自の自我の働きである。不快な感情を湧きたたせたとしても、それはその人の魂の課題である。明らかに相手に悪意を持って行動した結果でなければ、自分を必要以上に傷つける癖は手放した方がいい。
☆安全地帯
作り物の花が真っ先に見える。オレンジがかった赤いセロファンで出来た花。どうやら白い画用紙に幼い子が描いたような絵の世界の中に居る。作り物の花、花壇、三角屋根のおうち、空は未完成で真っ白なまま。
セラピストから「足元は草?」と問われたら草が、「何か生き物はいますか?蝶々?」と問われれば蝶がサッと出現する。わあ、ここでは何でも想像した通りになる。面白い。
このセッションの後、この絵は完成するんだろうな。どんな絵になるのかな?と静かにワクワクしている。
同時に、「現実は、実はこの絵の世界のように作り物(イミテーション、偽物)である。」というメッセージをどこからか受け取る。
セラピスト役が、退行誘導初体験の受講者だったので、普通のお花畑が出て来なかったことでたいそう悩ませてしまった。たまに、心象風景のような安全地帯が出現することがある。クライアントの潜在意識が出してきているので、何か意味がある。この絵の世界の意味はセッション後判明する。
☆階段を降りて幼少期の楽しい場面へ
幼稚園の部屋にいる。「自分の描いた絵がアルバムの表紙になって嬉しい。」と言っている。
ここでも、幼い頃クレヨンで描いた自分の絵を眺める。富士山の麓に家族で旅行に行った思い出を絵に描いたもの。水色の背景が印象的。画面のほとんどを青空にした構成だった。
「絵」「空」というキーワードがもたらされる。今後セッションが進むにつれて、テーマにどのように関わっているのか、謎が解けて行く。
☆テーマに関わる人生の場面へ
10歳くらいか?T県に住んでいた時の社宅。台所に母と二人で居る。目の前に石油ストーブがあり、薬缶のお湯が沸騰してシュンシュンと鳴っている音が響く。
その音だけが響いていて、緊張感で空気がピーンと張りつめている。身動きすると大切な何かが壊れてしまいそうなくらい。繊細なインスタレーションの作品のように。
母は、無表情で立っている。私は動けずに固まっている。
私が何かやらかしたのか?母は怒っているのか?母に反応してもらえない。
小さい私「自分が何をしてしまったのか分からない。泣きたいような気持もあるけど、泣いてしまうと、何かを崩してしまいそうで、泣くことができない。どうしたらいいか分からない。動かないことしか出来ない。」
まさに凍結している。ストップモーションの絵の中で、薬缶の水蒸気だけが現実感を主張してくる。
シュンシュンシュンシュン・・・
母に意識交代。「〇〇ちゃんが緊張して固まっているのが分かる。何か言葉をかけてあげたいけど、言葉が出て来ない。なんだか、現実がすごく遠くに感じる。」
母の内面を感じる。人間的な精神の営みがあまり感じられない。現実感の無い中で、五感すら奪われて、呆然としている。半透明の豆腐の中に閉じ込められている感覚に近いか。
☆大人の私登場
膠着を解決するために、大人の私が小さな私の側にやって来る。
瞬間に、均衡が崩れる。
小さな私は思わずほっとしたのだろう。緊張が緩み、泣き始める。
小さい私「初めて泣けた。」
原因がだんだん理解できてくる。
小さな私「今、分かった。何が起きていたか。お母さんが、人形みたいになって反応できなくなる病気になっちゃったの。いつもそうだったわけじゃなくて、何がきっかけになって無反応になってしまうのか分からない。でも、もしかしたら私が何かやっちゃったからかもしれないって思った。何か行動する時は、とても気を付けて、考えてから行動しないといけないと思った。」
大人の私と何かしたいことはないかセラピストに質問される。
「外に出たい・・・」と小さな私は力無く言う。
手をつないで、外に出る。社宅の駐車場で、ただ空を見上げている。小さな私は少しほっとしている。泣けて良かったと思う。空を見上げながら決意をしている。
小さな私「あの家で、お母さんと生きていかなきゃいけない。もっと強くならなきゃ。傷ついても大丈夫になるように、もっと練習する!」
大人の私「そうだったんだね。そうやって私の心を守ろうとしてくれたんだね。強くなるために、いつも最悪なことを想定して、一旦心を傷つけることで練習しようとしていたんだね。ありがとう。おかげで私は生き抜くことができた。あなたのおかげだよ。でも、もう終わった。あの辛い状況は解決したんだよ。(実母はその後亡くなっている)もう頑張らなくていいんだよ。もう練習する必要もない。もう大丈夫になったんだよ。」
小さい私の表情は、まだ浮かない感じだ。そりゃそうだろう。40年以上、緊張して張りつめたまま、役割をこなしてきたのだ。急にやらなくて良くなったと言われても、「え?どういうこと?」とにわかには信じられない様子。
大人の私「あまりに急なことで、一気に解放するのは難しいと思う。これからも頻繁にこの子に声をかけて、もう大丈夫なんだよって少しずつ伝えて行こうと思う。」
☆安全地帯へ戻る
いきなり目の前に白いハイビスカス。青い空と海。沖縄か?
どうやら、このインナーチャイルドちゃんに、「今までありがとう!ゆっくりしてきてね~」とイメージの中でバカンスに送り出した感じ。
☆感想
最初、安全地帯が絵だったのは、その当時、現実が辛すぎて、おそらく想像の世界にしか安心する場所が無かったのだろう。絵に描く世界なら想像した通りに好きに描くことができる。安心安全な場所という誘導に、インナーチャイルドの心情が呼び出されて、その子の望む安全な世界が潜在意識から届けられたのだろう。
愛する家族の中でも大切な母親が、自分に対して無反応になってしまうという状況は、恐ろしい出来事だった。母は精神の不調を突然発症させた。病気なのだと知ってはいても詳しい事は理解できない。無意識に自分が何かやってしまったことが原因だったのではないかと感じてしまったのだ。
無反応の母と共に家の中で過ごすのも辛いが、だからと言ってどこに行くことも出来ない。共に暮らしていくしかない。生きて行くには、心を強くするしかないと思ったのだろう。そのために、幼いなりの発想で、最悪な想定をして、あらかじめ心を傷つけておけば、現実では傷が浅くて済む(一度経験しているので、慣れる?)という技を編み出したようだ。賢かったのかどうか分からないが、私はちゃんと生き抜いてきたのだから、このインナーチャイルドに救われた時期もあったのだ。
病の母も亡くなり、次なる人生の試練が次々襲い掛かる。心の筋トレを実践してくれたインナーチャイルドのおかげで、私は今、幸せに穏やかに生きている。でもインナーチャイルドは、相変わらず真面目で必死で、私をどうにか守ろうと頑張り続けていた。誰かに「もう大丈夫なんだよ。その役割から降りてもいいよ。もう傷つくような過酷な現実は起こらないからね。」とハッキリ伝えてもらわなければ、いつ何が起きるか心配で同じ反応を繰り返すしか無かったのだろう。
沖縄へバカンスに送ってしまったが、インナーチャイルドは、美しい海で開放感を味わってくれているだろうか。
時々、この子とつながって、大丈夫だよと、声をかけていきたいと思う。
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