中立は難しい~逆転移

 


あなたは、こんなことはないだろうか。

朝から機嫌よく、穏やかな気持ちで過ごしていたのに、ある人物に会ったら、急に、怒りや悲しみなど、ネガティブな感情が沸き起こってきたこと。初対面なのに、話をしていると、何故かイライラしてきたり。気づいたら、キツイ言い方をしてしまったり。いつも人には優しく接しようと心がけているはずなのに。ああ、私って、ダメな人間だなあと。自分を責めてしまったり。

しかし、その人物から離れると、そのネガティブさは消えてしまう。あれ?あの感情は、何だったの。

あれは、本当に私の感情だったのかな?まるで、誰かにいきなり憑依されたみたいに、感情に振り回されてしまった·····不思議だ。

このような、誰もが日常で経験している、この現象は、

逆転移  と言う。

自分の中の感情に振り回されてしまいがちなあなたに、ぜひ、お伝えしたい。きっと楽になる。

ヒプノセラピスト 中島勇一氏の講義を参考に、ご紹介したい。

セラピストは、「自分の心を中立に保つべき」と、セミナーでまず習う。

しかし、実際は難しい。クライアントに丁寧に寄り添いたいと面談しても、自分の中に、様々な感情が出てきてしまう。中島氏は、「中立はあり得ない!」と断言する。

少しだけ、言葉の説明をしたい。

〈転移〉

クライアントがセラピストに、ある気持ちを感じる。

例:セラピストの性格をよく知らないのにも関わらず、自分の父親のように、怖い人だと感じる。

〈投影〉

セラピストは、クライアントと話をしていると、怒りが湧いてくる。でも、セラピストは自分が良い人だと思いたいので、この感情を人のせいにする。クライアントが怒っているに違いないと思う。

〈逆転移〉

クライアントの怒りを拾って、セラピストはイライラする。クライアントは、怒りの感情が潜在意識にあるのに、気づいていない。怒りを切り離している。セラピストは、まるで自分の感情のように怒りを感じてしまう。

古典的には、逆転移とは

セラピストがクライアントにある気持ちを感じることを言っていたが

現在は、さらに発展し、

中立でいるはずのセラピストが、色んな感情を感じてしまうことを全部まとめて表している。

もう少し、逆転移について踏み込んでみる。

セラピストがクライアントに抱く全ての感情のことだが、二人の間に自然に交流が起こり、治療が進むのであるから、強い感情が起こるのは当然であると言う。

セラピストは、クライアントに共感したいのに、何故かイライラしてしまう時がある。

例えば、クライアントの幼児期に、親との関係で、親から過剰に責められていたとする。その責める、責められる時に感じた気持ちを、クライアントは不快なために、切り離してしまう。感じないようにして生きてきたわけである。しかし、切り離された感情は、潜在意識に存在しており、セラピストは、その感情を拾ってしまう。そして、クライアントを責めたくなってしまうのだ。

このように、自分の中の気持ちに振り回されてしまうのだ。

人の気持ちが自分の中に入ってきて、自分の気持ちのように思ってしまうことがあると知っておくだけで、随分違う。

人の気持ちが外から入ってくると知っていたなら、「これは誰の気持ち?」と問いを立てることで、対策になる。

講座の中で、参加者同士、ワークをした。

一人が、過去の人間関係での楽しい思い出を7分語る。

もう一人は、相づちを打ちながら、聞く。その際、楽しかった気持ち以外の気持ちが自分の中に、感情、イメージとしてちらっとでも出てこないだろうかと、注意しながら聞く。(普段、セラピストは自分の中に出てきた感情は流してしまうため、この聞き方は、通常していない。)

「出てくるかも?」と意識しながら聞くと、様々な感情をキャッチできているようだ。

ワーク後のシェアタイムでは、楽しかった話しか聞いていないのに

*胸がギュッと締め付けられた

*一人が寂しい。孤独を感じた

*自分はダメな人間だと感じた

と、聞き手は様々な感情を、まるで自分の中にあったかのように感じて、戸惑っていた。

例えば、Aさんは、劣等感を持っていたのだが、感じないように、切り離して生きてきた。誰が見ても、自信満々に前向きに生きている人物に見えた。本人すら、自分に劣等感があると気づけていない。しかし、逆転移により、周りの家族や従業員が、Aさんの劣等感を拾ってしまい、いかにも自分が感じていると思ってしまう。実際、Aさんの娘さんは、いつも自分に自信がなく、また従業員たちは、「自分はダメな人間だ·····」と、次々辞めていった。面白いことに、娘さんも、元従業員も、Aさんから離れて暮らすようになった途端に、劣等感から解放され、自身を取り戻されたそうだ。

自分の感情は、沸き上がってきた際に、抑えることが出来るのに、他の人の感情は、このように拾ってしまうのである。憑依されると表現した方が分かりやすいかもしれない。

セッションでは、面談中に、クライアントがイライラしているように感じたとしたら、

「そのような感情を感じているのはいつからですか?」と聞いてみると、判断しやすい。

セラピストと出会ってから感じ始めたと答えられたら、セラピストの(切り離した)感情の影響かもしれない。

では、逆転移させてしまったと分かったら、どうしたらよいのか?

「そんな感情が自分にあったのか!」と発見すること。その後、セラピー等で、自分の感情を癒していくことだ。

ポイントは、自分が切り離した感情は、(上記の例では、劣等感)自分では気づけないところ。

ワーク最中、逆転移が起きていると理解したセラピスト役が、相手に「あなたは、寂しかったんですね。」と声がけしたところ、クライアント役の人にストンと癒しが起きたそうだ。これは、稀なケースであり、通常は、クライアントには「私は寂しい」と自覚がないため、そんなことを言われたら、怒り出してしまう。そのため、セラピストは、クライアントの切り離した感情を安易に口にせず、クライアント自身が感情を感じられるようなワークをするそうだ。

大切なことは、この、「私は寂しい」という感情は、現実には起こっていない点にある。過去の感情に、今いる人間関係が振り回されているわけである。

なぜ、このような現象が起きるのか。

Aさんの例で言うと、「劣等感」という、切り離した片割れは、元に戻りたい。一緒になりたがっている。「ねえ、気づいてよ!」とAさんに合図してもAさんは気づいてくれない。だから、「劣等感」は、Aさんの周りの人々に、協力をお願いするわけである。「Aさんに、あなたには劣等感があると、伝えて!」と、周りの人に表現してもらうわけだ。

Aさんは、周りの人を通し、「自分に劣等感があるなあ。」と気づいたとする。ただ、劣等感は消えるわけではないため、①自覚する ②感じる ③セラピーを受ける というステップが必要となる。セラピーの代わりに、例えば、周りの人に「俺ってさあ。自信満々に見えるかもしれないけど、実は、劣等感があるんだよなあ。」と、共有してみるのも良い効果がある。

逆転移は、体験を通して学んでいくしかないが、これを扱えるようになると、楽になっていく。原因がすぐ分かるようになっていく。知っているだけで違うので、もしも感情に振り回されているシチュエーションになったら、「これは、誰の感情?」と、一旦冷静になることをおすすめする。

実は、この、逆転移のことを知る前日に、私は不思議な体験をしていた。

私は、一日、穏やかに、機嫌よく過ごしていた。

それが、C氏と顔を合わせ、しばらく話をしていたら、段々と怒り、悲しみが込み上げてきて、わ~っと感情をまくし立ててしまったのだ。まるで、発作が起きたかのように。コントロールができなくなり、次々、ひどい言葉を吐いてしまったのだ。挙げ句の果てに、

「あなたは、私をバカにしているんだ。バカにするな!」と怒鳴っていた。

C氏は、目を白黒させ、ビックリしていた。「何でそんなに過剰反応するの?おかしいよ。もう止めよう。分かったから。」と、狼狽えていた。

私も、感情の発作に翻弄されながら、

「あれ?おかしいな。私らしくないな。これって、私?まるで、何かに憑依されたみたいだ。」と感じた。

少なくとも、C氏に、バカにされたと感じたことなど、ほとんど無かったから、自分のことながら、驚いていた。

口喧嘩の際に、売り言葉に買い言葉で、エスカレートしてしまうケースがあるが、「こんなこと、普段思ったこと無いのに。言いたくないのに。優しくしたいのに。何でこんなに感情が荒れてしまうのだろう?」と、不思議に感じたことは、ないだろうか。

これは、逆転移だった可能がある。

C氏は、とても素敵な人間性の持ち主で、魅力的な人物なのだが、何故か、自己否定感が強い。周りが、彼の素敵な面を素直に褒めたとしても、C氏は決して認めない。「どうせ社交辞令だろ。」と、いつも冷めた気持ちになるらしい。

もし、この日の私の感情が、C氏の切り離した感情を拾って、脳内発作が起きていたとすると、C氏が過去に感じた感情の「怒り、悲しみ」それは、「蔑まれた。バカにされた。」という体験から生まれたのかもしれない。「俺をバカにするな!」と訴えたい相手は、もう現実にはいないのだが、潜在意識の中に、癒されない感情が統合を待っている。

これは、催眠療法の年齢退行で癒せると思うが、本人が、なんとかしたい。癒したいと、意欲を持ってくれない限り、催眠セッションは出来ない。

もう一つ、わたしが逆転移により、感情を拾って爆発してしまった原因が思い当たる。

前日に、催眠療法セミナーを受けており、実技で何度も潜在意識優位になっていたため、この日も、潜在意識と顕在意識の間にあるクリティカルファクターという膜のようなものが開きやすくなっていたと思われる。

潜在意識優位になると、他人の意識にもつながりやすくなる。これは、セッションで何度も体験していることだ。

この日、私は、C氏の切り離した過去の感情を、拾いやすい状態にあり、また、クリティカルファクターが緩んでいるため、理性が働きにくく、感情の奔流を塞き止められなくなったのだと思われる。

C氏は、私にいきなり怒鳴られて、シュンとしてしまった。とても可哀相なことだ。

しかし、別な側面から見れば

「Cさん、おめでとう!あなたの切り離した感情が、正体を表してくれましたよ。気づいて自覚して癒せば、ずっと楽に生きられるようになりますよ。」という祝福にもなる。

C氏は、本質はとても優しく、誰よりも愛にあふれるハートの持ち主なので、自身の価値に気づいて、自分のどんな面も好きになってほしいなあと思う。

私は、C氏のどんな面も、切り離した感情でさえも、丸ごと大切に思っているし、尊敬する気持ちは変わらない。

これを逆に応用すると

例えば、会った人が、急に機嫌が悪くなったり、ネガティブなことを言い出した時は

「あれ?もしかしたら逆転移?私の切り離した感情を見せてくれてる?」

という意識になってみると良いかも。

普段は、「こいつ、こんな嫌なやつなんだな。」と、恨みがましく思うのが関の山だが、逆転移かも?と思うと

相手は、私を映す鏡なのである。

「鏡の役割をしてくれて、私に大切なことを伝えてくれてありがとうございます。」

という気持ちになれれば、自分の隠された内面も探れるし、相手を否定する必要も無くなる。

これって、すごい発見かも!

こう考えて生きていくと、私にとって都合の悪い人は、一切消えてしまう。皆、私のために、それぞれ役割を演じてくれている。

もう、人間関係は、100%

感謝だけになる。


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