虫と同居する

 1ヶ月くらい前からだろうか

家の中で、小さな黒い虫が飛び回るようになった。

おそらく、リビングの窓辺に並べている植物の鉢から、孵化したのではないかと思われる。

害虫は、退治するべし。

虫をベタベタくっつける棒を立ててみたら、一週間で、何十匹という羽虫がくっついた。

その他、リビングで座っていると、目の前をフラフラ飛び交うので、バシバシ手で退治した。

殺しても殺しても、切りがなかった。

どこからか、湧き出してくる。

植物さんたちは、静観を決め込んでいる。

自身の生命を保持してくれる土の中で、密かな小さな命を育んでいる。まるで、マザーアースのような母性ではないか。

ある時、リビングで読書をしていたら、羽虫がフラフラ私の周りを飛び始めた。

本に夢中になっていたのもあるし、何だか、いちいち反応するのもどうかと思い、放っておいた。

気づいたら、虫は、私の指の上でくつろいでいた。

すっかり安心した、その無防備な姿に、ハッとさせられた。

虫たちは、たまたま、家のなかで生まれてしまっただけだ。たまたま冬だったから、窓が閉まっていて、外に出ることが不可能だった。

目覚めて、始めての世界に恐る恐る飛び出し、目にするあらゆるものに好奇心を持って近づいていったところ

凶暴な巨人(私のこと)に、瞬く間に潰されて、人生、いや、虫生数時間で強制終了。

虫の声に耳を澄ませてみる

「こんにちは。はじめまして。ぼく、さっきね、地球に生まれたんだよ。よろしくね。」

そう、挨拶してくれていたかもしれない。

それなのに、小さな虫だからということで、何の心の痛みを感じず

手のひらで、パンっと、命を潰してきた。

この行為は、戦争で罪の無い人間を殺戮してきたことと、同じ次元かもしれない。

自分にとって、不都合な存在であれば、命を奪っても構わない。目の前からいなくなってくれたら、清々する。それだけのことで。

私の指の上で無邪気にくつろぎ、楽しげに部屋を探検する、この小さき命にフォーカスしていると、不思議と響き合うものを感じ始める。

私の意識は、虫の中に入り込み、虫の視点で私を見上げる。

「よろしくね。地球は、ごきげんだね。」

私の意識に戻り、私もニッコリする。

私も虫さんも、地球も宇宙も、ごきげんだよ!

私は、もう、虫を殺さなくなった。

命として響き合う、愛おしい存在になったからだ。

なぜか、夫も同時期に同じ心境に変化していた。

今朝も、一匹の小さな羽虫が、私の側に飛んできた。

「おはよう!」と声をかけたら、しばらく側で大人しくくつろいでから、リビングの冒険に飛び立っていった。

因果関係は不明だが、

私たちの心境が変化してから、羽虫の大量発生はパタリと止んだ。

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