問題を解決したくない人々

 鬼子母神の逸話

彼女は500人の子どもの母。子を育てるために栄養を欲し、人間の子どもを捕まえて食べていた。釈迦は見かねて、彼女の末っ子を隠してしまう。彼女は半狂乱となり、我が子を探し回り、釈迦に助けを求めた。「たった一人の子を失う親の苦しみはいかほどであろうか。」諭され、彼女は深く反省。仏教に帰依したという。

この逸話を知り、人は、闇に堕ちなければ学べないのだろうか。と、悲しくなった。我が子を大切に育てたいと思うが余り、他人の子を喰らう母。そこに、相手に対する想像力は無い。我が子を失い初めて他人の痛みを我が痛みとする。その実体験から、世の中全ての母子を守護する神となる。やはり、実際に体験することが魂の成長には欠かせないのだろうか。想像力だけでは無理なのだろうか。

最近、17歳の兄が幼い妹を暴力により殺してしまう事件が起きた。シングルマザーの元に、子どもたちが施設から返され、ようやく親子水入らずで幸せに暮らせるのでは?と児童相談所も祈っていたことだろう。生活上の問題を抱えているならば、福祉制度もあり、カウンセリング等で母親が周りに頼れるような体勢作りもされていたのではないかと信じたい。この事件は、ケースワーカー、相談員、地域の人々、友人、親類たち、同じような境遇の人々の心に波紋を広げたことだろう。

このケースに限らないが、周りがどんなに助けたいと力を注いでも、暖簾に腕押しで、事態が改善しないばかりか、最悪の事態に向かいまっしぐらに進行してしまうことはある。少なくとも、かの家族は孤立無援ではなかったと思われる。それでも、何か出来たのではないかと、ずっと自身を責めている関係者も多いことだろう。

何か出来たのでは?と苦しんでいる人々に対して、こんな見方もできるかも?という話がある。さらっと流す程度に留めていただきたい。

能力のある方が、この事件をリーディングしたところ、兄妹は、魂の約束を実行したとのこと。過去世で妹側は加害者であり、兄は被害者。今世では、カルマ解消のため、兄妹の役割が逆転した。この運命を実行しやすいように、魂年齢の若い母親を選んで生まれてきた。兄妹は、過去世からずっと役割を交代し、因縁の関係を続けてきた。彼らが欲する学びを完了しない限り、来世も殺し殺される役割が続いていくらしい。なんて悲しい因縁だろう。鬼子母神の逸話に通じるものを感じた。自身が業火に焼かれる程の究極の痛みを体験しない限り、悲劇を繰り返していく。いくら周りが、彼らを助けたいと動いても、そこに学びが起きない限り、運命の歯車を止めることが出来ない。人間の魂の成長と、それに伴う体験の何と壮絶なことか。

他人事として見ている私自身にも、きっと壮絶な過去世がある。幾度も戦争は体験しているだろうし、殺したり殺されたりしているだろう。今世で、人並みに穏やかに生きているのは、過去世の私が存分に闇の体験をこなしてきたからであり、「闇は充分だから、そろそろ光に戻ろう。」と魂がある程度納得したからに他ならない。

人それぞれに、魂に課せられた学びがある。だから、いくら救いたいと動いても、本人が苦しみを体験したければ、それを取り除くことはできない。

もし、行動したことで、誰かを救えたように見えたとすれば、それは相手が学びを終えるタイミングだったということ。

魂の学び=体験

これが、地球上に生きる意味だ。

殺人事件と比べるにはあまりに軽い例だが、私の母の話を少し。

母は認知症の父のお世話で、とても大変なようだ。父が失禁したり、失敗をする度にイライラして、「気が狂いそう。おかしくなりそう」だと言う。家出をしたい。死んでしまいたい。と激しい愚痴をこぼすこともある。母の心身の健康のために、色々なサポートを提案したことがある。行政サービスから、民間施設まで、考えつく限り調べ、足も運んだ。しかし、どんな提案も母は頑として受け入れない。例え自分が倒れたとしても、最後まで父のお世話を自分でするのだと頑張り続けている。一時期は強行手段に出ようとしたが、今は諦めた。母が倒れようが、気がおかしくなろうが、気が済むまで好きにやってくれ。という気持ちで見守っている。おそらく、端からみれば苦労であっても、母はその苦労をしたいのである。問題を解決されてしまうと困るのだ。きっと、やり遂げた先に、母が求める学びが待っているのであろうから。私に出来ることは、母の体験の邪魔をしないこと。親不孝で冷たい娘に見えるだろうが、母の魂の意思を尊重するならばそうなる。私の役割は冷たい娘である。

鬼子母神の逸話から、色々、考えを巡らせた。

学びは人それぞれ。

悲しい事件は起きて欲しくないが、世の中にはどうにも避けられない流れもある。

もちろん、良くなっていく流れもある。

人事を尽くして天命を待つ

やることをやったなら、後はその人の運命に委ねるしかない。

いつかは、どの魂も光に向かって帰っていく。そう信じて絶望することなく

自分は、ひたすら光を目指し進んでいきたい。




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