納骨すったもんだ

 父を見送るための儀式は、まだまだ続く。

☆若い世代のお寺

昨日、母はタクシーで地元の浄土真宗のお寺、D寺を訪問してきた。例の「お坊さん詐欺事件」で助けてくれたD寺奥様にお礼を兼ねたご挨拶をさせていただくためだ。D寺奥様は、電話の声で想像していた感じとはまったく違っていて、母はビックリして後にLINEしてきてくれた。

母「お母さんが想像していた方じゃなくちょっとびっくりしました。つけつめをして、やはりお若い方でした。ぱっと見たとき、外人かと思いました。お電話の通りてきぱきして気持ちいい方でした。行って来て安心しました。」

地元の寺を引き継いだのが、見た目30~40歳代の住職夫婦である。新しい世代のお寺の在り方も、時代に合わせて変化してきている。メチャクチャお洒落で女優さんみたいなお寺のおかみさんが居てもいい。今は、お寺にカフェを併設したり、コンサート、ヨガ教室や手作り市を定期開催したり、お寺をコミュニティの場としてゆるやかな地域のつながりを作っているところも多い。座禅体験や写経なども若者に人気があるようだ。私も、お寺で手づくり市があればぜひ参加してみたい。

母は、6月の納骨までは父の弔いのためにお経をあげてやりたいと、月命日や四十九日の読経を予約してきた。6月までに4回住職が実家に来てくれることになった。


☆遺骨をどう運ぶのか

我が家の墓は北海道にあるので、納骨は大仕事である。私たち夫婦も、姉の家族もそれぞれ仕事をしているので、二泊三日の休みを合わせるのも一苦労だ。休みが取りやすく、季節も穏やかな6月上旬に総勢7名で納骨の旅を決行することとなった。

旅慣れている姉に飛行機やホテルの手配が任された。姉は、早速、格安航空機をネットで検索した。6月は人気の旅行シーズンに当たり、既にほとんどの便が満席になっていた。それを見た姉は焦ってしまい、「とにかく席を確保しなきゃ!」と、即予約を済ませた。予約した航空券はキャンセルが出来ないらしい。

これがトラブルの原因になるとは、その時は、予想すらできなかった・・・・

そう、私たちは遺骨を運ぶという大切な任務があった。通常の旅とはちょっと違う。運ぶものは、荷物であって荷物ではない。物扱いされるけど、物ではない。そこのところの微妙な配慮について、姉も私もあまりに無知であった。

私は、格安航空機に乗るのは初めてだったので、遺骨の扱いがちょっと心配になった。そこで姉に質問した。「遺骨が機内持ち込みできなかったら、お父さん、貨物室に入れられちゃうかも?重量制限とか大きさとか大丈夫かな?」

この時、ふと、ペットを貨物室に入れなければならない飼い主の心情がリアルに分かるような気がした。

姉の夫の協力もあり、夜を徹しての調査が始まった。ネット検索しまくり、航空会社のライブチャットでもダイレクトに質問を投げかけた。あくまで回答は「規定サイズ・重量を満たしていれば機内持ち込み可」ということだった。父の骨壺は、奥行きが1センチ大きかった。

え?どういうこと?普通、機内持ち込みできるサイズになっているんじゃないの?


☆遺骨は機内に持ち込めるのか

今後、どなたかの参考になるかもしれないので、ポイントを書いておく。

・骨壺、骨箱は「機内持ち込み手回り品」となるため、既定のサイズに収まっていること。

・骨壺サイズは9種類ある。(2寸~8寸)

・一般的サイズは7寸(つまり幅が23.1㎝)

・航空会社により、機内持ち込み荷物の条件がある

(例)

【ANA】

 総重量10㎏

 サイズ:客席100席以上 55×40×25㎝以内

       100席未満 40×35×20㎝

【JAL】

 ANAより融通がきいて丁寧になる

 総重量とサイズはANA規定と同様

 ただし、上記サイズを超過していても特別旅客料金(11,300円)を支払えば持ち込み可能。予約時に申し出ること。

他の航空会社を利用したい場合は、「チケットを買ってしまう前に、直接会社に問い合わせて確認しましょう!」

≪結論≫

7寸壺の場合でも、通常は風呂敷やカバンに入れるため、それ以上の幅になる。これを考えると7寸壺をそのまま機内に持ち込むのは難しい。JALの特別旅客料金で持ち込むことを検討した方がいいだろう。

≪その他注意≫

保安ゲートを通る際に

『埋葬許可証』『火葬証明書』『死亡証明書』のいずれかが必要となる。

骨壺は金属製の場合、X線が通らないので中身を見せるように言われることもある。

遺骨の扱いは人間の尊厳にかかわることなので、各航空会社とも非常にナイーブになっている。公式サイトではNGになっていても、実際の社内マニュアルとしてOKとなっていることもある。機内に入ったらまず客室乗務員に遺骨を持参していることを告げ、その指示に従うこと。膝にのせておいたり、隣の席が空いていたら置かせてもらえることもある。

また、骨壺は、他の乗客への配慮として、それと分からないように風呂敷や専用バッグに入れて周りに配慮すること。


☆骨壺をめぐる迷走

姉は、「航空機チケットはキャンセル不可」「父の骨壺はサイズオーバーで持ち込み不可」という事実に、パニックになった。

私の夫が、ゆうパックで遺骨を送れることを調べてくれた。Amazonでは、骨壺梱包キットまで売っている。姉と私の夫は「飛行機が無理なら、ゆうパックで送るしかないね!」と頷き合った。私はちょっと嫌な予感がしていた。

一応、他の選択肢として、私が一人、JALのチケットを買って、別便で行くという案も出してみた。(もちろん格安航空機チケット1名分は支払った上で)が、姉は割り切りたかったようだ。姉は忙しく、疲れ切っていた。

さて、私がすやすや眠りについている間に、母と姉がLINEで骨壺バトルを繰り広げていた。

母は、案の定、姉からゆうパックで送るという提案を受け、泣き出した。

母「ダメなら、お母さんほかの飛行機で行きます。送るなんてことできないです。最後の最後にお父さんを一人ぼっちに出来ないです。かわいそうすぎます。安いのはわかりますが、他の飛行機にしてください。お願いします。」

姉「飛行機キャンセルできないのですみません」

その後、直接電話で話し合いが行われ、姉にすべておまかせするということで話が終わった。


☆あわや、ぼや(小火)騒ぎ

2月10日(土)

姉との電話を切った後も、母は夜中の2時過ぎまでスマホでネット検索をし続けた。遺骨をなんとか機内持ち込みたい。膝の上に置いて運んでやりたい。その一心で各航空機会社規約などを閲覧し続けた。「ゆうパックだなんて!どこからそんな発想が出てくるの?お父さんは荷物じゃない。ああ、情けない。悲しい。悲しい。」

朝、寝不足の母は、無意識のうちに鍋に火をつけて、そのまま放置してしまった。家中が焦げたにおいで充満した。それでも母は火にかけた鍋が原因であることが分からなかった。窓を開け放って、「近所で火事でも起きているのかしら?」とぼんやりと思っていた。ハッと気づいた時、ガス台の上の鍋は真っ黒こげとなり、部屋の中は煙で充満していた。母は慌てて火を消して、真っ黒の鍋はごみ袋に包んで捨てた。

母は一人、大号泣した。

「あの時あのまま焼けてしまった方がお父さんのそばにいけたと思います。今はもめ事なく静かにお墓に入れてやりたいと、それだけです。」

朝、母からこのようなLINEが入っていた。

私は、即座に母に電話をかけた。

母は祭壇の前で大号泣中だった。

「一日も早く、お父さんのそばに行きたい!」と。

そのまま母と3時間電話で話した。


☆ゆうパック騒動に感謝する母

姉も、一晩かけて調査を続行していた。格安航空機でも追加料金で対応できると判明した。母にはLINEでその旨を伝え、「念のため、成田空港まで行って確認してくる。」とまで言ってくれていたそうだ。

それでも、母の悲しい気持ちはおさまらなかった。そのまま泣き続け、今朝の、あわやぼや騒ぎとなった。

母は、結果には満足しているし、姉にも感謝の気持ちしかないと言う。ただ、「ゆうパック」という発想が出てきたこと自体が悲しくて仕方がないのだと。母の嘆きは、その部分に絡めとられ、動けなくなってしまったようだ。

私「違うよ。誤解だよ。ゆうパックは、単なる情報提供にすぎないよ。そういう方法もあるということだけ。誰もお父さんをゆうパックで送ったりしないよ。一人JALで行こうかという話も検討してたんだよ。ゆうパックの話を出したからお姉さんが許せないの?ゆうパックのことをお姉さんに知らせたのは私だから、私に怒ればいい。お母さんを傷つけて悲しい思いをさせてごめんなさい。配慮が足りなくて、勉強不足で、本当にごめんなさい。」私も、泣きながら母に謝った。

母は、責めたいわけでも、謝られたいわけでも、怒りたいわけでもないのだと言った。ただ、何も出来ない自分が情けないのだと。お父さんに謝りたい。施設に入れたことお父さんに許してほしいと。

私「お父さんは、お母さんには感謝の気持ちしか無いと思うよ。だから許されたいのは、お父さんからじゃないよね。お母さんがお母さん自身を許したいということだよね。自分を許すって、とても難しいことだよね。それがお母さんの魂の課題なんだね。お母さんにとってとても大切な課題なんだね。」

3時間、いろんなことを話しているうちに、母も落ち着いてきた。

母「初めて、しっかり泣けた気がするわ。お父さんが亡くなってから、ちゃんと泣けた実感が無かったのよ。ああ~、大号泣できたわ。浄化された感じよ。これもお姉さんのおかげかもね。」

私「良かったじゃない!しっかり泣けたんだね。少し胸の中が軽くなったんじゃない?そうだよね、お姉さんがゆうパックの話をしてくれたから、大号泣できたんだよね。お姉さんに感謝だね。これからも泣きたい時には泣けばいいよ。怒りたいときには怒ればいい。家族なんだもの、最後まで見捨てることはないんだから。感情をぶつけてしまったら、後で「ごめんね」って言い合えばいい。「私はこういう気持ちになったんだ」って、正直に打ち明ければいい。こうやって家族は学び合っていくんだね。お母さんのおかげで、私も今日学べたよ。お母さん、ありがとう。」


☆私から母へメッセージ

その日の夜

母へメッセージを送った

「今まであまり話をする機会がなかったので、プラスに考えれば、お父さんの葬儀や納骨やいろんな手続きを通して、家族が力を合わせることで、関係が深まったり、理解しあえたりするのでしょう。泣いたり感情的になったからこそ、本音を言えたり、受け入れあえたりするきっかけになります。お父さんの置き土産ですね。行き違いがあったり、悲しくなることもありますが、私は以前よりお母さんと話せるようになり、嬉しくもあるのです。今日もたくさんお話してくれてありがとうございました。」

母の返信

「お母さんも同じ気持ちです。今日ほど嬉しかったことありません。ありがとうね。」 


さて

父の遺骨を無事北海道へ運ぶことは出来るのか?

私たち家族のドタバタ劇は続く・・・・・


写真∶千代大海の化粧まわし

両国相撲博物館にて

    

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