催眠療法に思うこと

 セミナー中に、私がセラピスト役をやらせていただいたケースを紹介したい。守秘義務があるため、詳細は伏せる。催眠中の感じ方が人それぞれである点に焦点を当ててみたい。

潜在意識は、奥深い。私たちセラピストは、クライアントの課題解決のために、催眠誘導をさせていただくが、思うようにならないことも起きる。困ったときはどうするか?

基本は、催眠中のクライアントに「どうされたいですか?」と、問う。というのは、答えは必ずクライアントの潜在意識が知っているからだ。セラピストは、答えは何も分からない。クライアントには、問題を自分で解決する力があると信じ、ひたすら手伝い、寄り添うことしか出来ない。

クライアントが、何も感じない場合に、どう寄り添うのか?今後の学びのために、記録しておく。

以下、ケースについて最小限の記述をするが、個人に配慮し、一般論も織り混ぜているため、事実どおりではないことを了承いただきたい。架空と捉えていただいて構わない。

◇テーマ

クライアントに話をうかがっていると、○○の話題が何度も上がった。では、○○との関係について取り組みますか?と質問したが、それについては自分で既に解決してきたから、よいとのこと。特にテーマを絞りたくないとの要望。「今のクライアントに一番必要な場面」という言い方で誘導させていただくことにした。本来は、テーマについて二人で共通の目標を持っておかなければ、催眠中に必要な場面が浮かんで来なくなる(焦点が定まらず、イメージが散漫になる)おそれがあったのだが。クライアントから要望されない場合には、どうにもならない。潜在意識の力を信じることにする。本当は、○○との関係で、浄化されるべき感情があるのだろうなあと感じたが、それ以上は触れなかった。課題が明らかでも、それに取り組むタイミングは人それぞれ。今日はそのタイミングではないと考えるしかなかった。

◇催眠誘導

スムーズに催眠状態となる。頬が痙攣しているので、かなり深く入った様子。

◇安全地帯

花畑で、イメージ力を確認。誘導に従い、花や見える景色を言葉にしてもらう。きちんとイメージできている様子。ここまで順調。

◇楽しかった子ども時代の場面へ誘導

階段を10段降りてもらう。通常は、そこから場面が浮かんでくるのだが、階段下の状況からなかなか進まない。何も見えてこないという。足元から順番に、着衣などを感じてもらう。顔を感じたところで、本人ではなく、名前も別人になっていたので、年齢退行から前世へスクリプトを変更する。

◇普段過ごしている場所の場面

落ち着いて座り、無を感じるという行為を日常で行っていた様子。そのまま、無を感じて味わっていただく。

◇人生の大切な場面へ誘導

何も感じないとのこと。深呼吸してもらったり、上下左右を見回してもらったり、五感を感じてもらう。黙っている時間が過ぎていく。このままでは眠ってしまうので、定期的に声掛け。「今、どんな状況ですか?何かを感じたら教えてくださいね。」

クライアントに了解を得ながら、場面を3回ほど移動させたが、何も感じない。かろうじて「心地よい。」という感じ方だけ言葉にされた。

「どうされたいですか?」との質問には、答え無し。(眠っていた?)

最後にようやく、△△を見上げながら寝転がっているシーンや、✕✕を歩くシーンが出てきたが、ストーリーは何も展開せず。

◇臨終、中間世

スクリプトでは、どうしてもクライアントが前世の魂と対面することになるため、臨終場面に移動してよいか確認。「この人生について何も感じていないのに。」とクライアントはなかなか了解しない。(当たり前の反応だと、申し訳なく感じる。)中間世で、高次元存在に質問することもできると、半ば説得し、臨終を受け入れてもらう。臨終の姿もなかなか浮かばない。「どんな表情をしていると思いますか?」という質問で、ようやく「穏やか」という答えを得る。時間制限が無ければ、もう少し長くトライできたかもしれないが、いずれにしても、仕切り直しが必要と感じた。

◇安全地帯に戻る

花畑に戻り、どんな感じか質問する。ここで何を感じるかで、このセッションが課題解決になったかどうかの判断が出来る。景色が鮮やかになっていたり、光に満ちていたり、曇り空が晴れてきたり、一般的には何らかの変化を感じ、解放感を味わっていただくのだが、

「普通の感じ」との答え。

後で聞いたのだが、あまりに深く催眠に入っていて、ここでは何を答えたか覚えていないとのこと。

◇事後面談

Zoomでセッションしたのだが、マイクに何かが当たっていたらしく、絶えず雑音がして、集中できなかったらしい。これは申し訳なかったと深く反省した。

もし、どうにも解消できない雑音が生じる環境でセッションする場合には、音を逆手に取り、「音がすると、さらにあなたは深い催眠に入ります。」と暗示することも可能。喫茶店などザワザワした場所でのセッションも出来るが、雑音が気になる人、気にならない人、それぞれいるだろう。工夫できる限り、静かな環境を準備したいものだ。

クライアントは、催眠にはしっかり入れたし、絶えず頭はスッキリしていて、気持ちは穏やかだったとのこと。今回のセッションでは、一切のストーリーが出てこなかったが、潜在意識は、精神統一した時のような感覚をもたらした様子。もしかしたら、自分が未来に目指す心境かもしれないとのこと。

セラピストからすると、反省点の多いセッションとなり残念なのだが、クライアントがこの体験から、何らかの気付きを得たのなら、意味はあったのかもしれない。セラピストは、一切判断しない。

潜在意識からもたらされたイメージや感覚は、その場ですぐに解釈できるわけではない。クライアントの潜在意識は開きやすい状態にあるため、翌日から一週間後に気付きを得ることも多い。ある方は、一年後に意味を見い出し、セラピストに報告してくれた方もいるそうだ。やはり、その方に適したタイミングで必要なことが起こり、必要な気付きを得るのだろう。準備できていない方に同じ体験が起きても、結果は同じにはならないだろうから。

セミナー全体を通し感じたことは、自分自身の課題に取り組むかどうかは、やはり、その人次第。他人が強要できるものではない。ということ。

本音としては、クライアントの潜在意識に潜む怒り悲しみの感情を解放するお手伝いをさせていただきたい。しかし、本人が核心部分を見ることを拒絶している限り、いくらセッションを受けても、根本解決には至らない。催眠療法は、受け身的施術ではなく、とても能動的な施術だ。催眠誘導は受けるが、問題を解決する主役は、クライアント自身。本人に、課題に取り組む意欲がなければ、潜在意識からの宝物を受けとることは困難だろう。

今回のセッションは、例えば、催眠療法とはどんな感じか、試してみたい。という、催眠ごっこ程度の好奇心を満たすのであれば、充分かと思うが、課題解決のための施術であったなら、不十分だと思う。

事前面談で、セラピストとクライアントが、共通のテーマを認識し、互いに協力し合う意欲を確認すること。

セラピスト任せではなく、自分で解決する力があると信じさせること。

イメージがうまく湧かない時の、適切な声掛け。時に、視点をどう変えるかの臨機応変さ。

最後まで諦めずに寄り添う心。

など、多くの課題を残した、心残りのセッションだった。

セッションに立ち合っていただいた講師からは

「通常は、セッションが途中で中断してもおかしくない状況でしたが、よく最後まで寄り添い続けましたね。」とコメントいただき、涙が出そうになった。実技3回目の初心者レベルでは、仕方なかったのかもしれない。

大きな原因としては、やはり、テーマをあやふやにしたまま、セッションに踏み切ったことだろう。クライアント本人が、何も意図しなければ、または、解決したい思いが無ければ、潜在意識は応えようもないのだろう。どの人生のどの場面を浮かび上がらせればよいか焦点が定まらないのだ。

一般論として、人生の困難に対し、自己と向き合う覚悟の無いクライアントには(または、課題を認識できていない場合)、暗示療法か、ソマティックヒーリングなど、別のアプローチをするのがベストかもしれない。あるいは、資格を持つカウンセラーを頼り、ある程度自己を見つめる機会を経てからの方がよいのかもしれない。

講師のコメントによると、「催眠に深く入りすぎ、眠っていたのではないか?」との指摘もいただいた。催眠療法だから、深く入れば効果的というわけではない。催眠中、潜在意識が100%になるわけではなく、顕在意識も残されている。顕在意識を20~30%残すくらいが丁度よいらしい。深度を誘導で、どのように工夫するのか、研究していきたいと思う。

もちろん、催眠中、声掛けをして、応えない時は、眠りに落ちているか、イメージに集中しすぎているかどちらかなので、ここはセラピストの勘が頼りになる。眠っていれば、少し大きめの声掛けをしたり、肩を軽く叩いたりする。(予め、了解は得ている。)

いろいろ並べてみたが、考えてみれば、クライアントは様々な年代、価値観、個性であり、一つと同じセッションは無い。兎に角、日頃からセラピストが研鑽を積み、引き出しを山ほど持っていることが何よりだろう。

大きな大きな宿題をいただいた。

セミナー6日間で、クライアント役を担ってくださった方々に、心から感謝の気持ちを送りたい。ありがとうございました。




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